【映画評】野獣暁に死す | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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5年ぶりに出所したビルは、無実の罪を着せた旧友フェゴーに復讐するため腕利きのガンマンを集めていく(DVDジャケットの作品紹介より)。1968年日本公開作品。監督はトニーノ・チェルヴィで、出演はモンゴメリー・フォード、バッド・スペンサー、ウィリアム・バーガー、ウェイド・ブレストン、ダイアナ・マディガン、仲代達矢。
 
本作はマカロニウエスタン(イタリア製西部劇)で、仲代達矢が原住民との混血児という設定の悪役フェゴーを演じています。製作者が黒澤明作品のファンであることから実現したそうです。フェゴーがナタを構える姿勢はサムライのようですが、日本人の血を引いているという設定ではありません。
 
「この人、まばたきしているのだろうか?」と疑問に思うほど、仲代は強烈な目力で演技しています。しかし、スケジュールの都合で語学の習得時間を取れなかったのか、おそらくイタリア語の台詞は吹替でしょう。
 
フェゴーへの復讐に燃えるビル(モンゴメリー・フォード)が腕利きの仲間を集めていく過程は、七人の侍』のようでもあり、『ドラゴンクエスト』などロールプレイングゲームのようでもあります。ボスキャラが仲代なので「仲代クエスト」ですね。
 
後に『サスペリア』を監督する、ダリオ・アルジェントが脚本を書いていることにも注目です。フェゴーの子分を殺すアイデアに凝っているのは、後の作品に活かされています。
 
それにしても、マカロニウエスタンというジャンルを、よく本場アメリカが許容しましたね。日本に置き換えると、中国や韓国で日本の時代劇を作るようなものですから。日本の戦国武将や幕末の志士を中国人または韓国人の俳優が演じ、中国語または韓国語の台詞でやり取りしたら、ネットで炎上すること確実です。
 
しかし考えてみたら、アメリカは『ベン・ハー』など数々のローマ史劇を作り、ローマ人をアメリカ人俳優に演じさせ、英語の台詞でやり取りさせてきたので、イタリアに対して強く出られなかったのでしょう。日本も『秦・始皇帝』や『敦煌』を作ってきた過去があるので、中国が日本の時代劇を作っても、よほど史実を曲げない限りは抗議しづらいでしょうね。
 
本作はアメリカ人のフォードや日本人の仲代が出演し、イタリア人スタッフによって作られています。マカロニウエスタンにおいては、クリント・イーストウッド主演の『荒野の用心棒』があるように珍しいことではありません(同作は黒澤監督の『用心棒』を元ネタにしています)。
 
今年の米国アカデミー賞で監督賞を受賞した、メキシコ人のギレルモ・デル・トロは「私たちの業界の一番素晴らしいところは、国境線を消し去ってしまえるところだと思います」とスピーチしました。それならば本作のようなマカロニウエスタンは、「業界の一番素晴らしいところ」が表れていると言えるでしょう。
 
★★★☆☆(2018年3月3日(土)DVD鑑賞)
 
モンゴメリー・フォードは、またの名をブレット・ハルゼイと言います。
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