
カイルは学校の研究課題と偽り、気になっている同級生のジェスを誘いかつて"天国"と呼ばれた廃墟の町へと向かった。ジェスの他にロブとベンが加わり4人になったメンバーは、難なく目的の町に到着する。しかしそこは無人でありながら、異様な気配に包まれていた。やがて町の調査を進めていると、ベンが狼に襲われ重傷を負ってしまう。急いで引き返すカイル達だったが、乗って来た車も狼によって壊されてしまい、4人はその町に閉じ込められてしまうのだった(DVDジャケットの作品紹介より)。2011年製作で日本劇場未公開作品。監督はジョン・レベルで、出演はアリシア・ジーグラー、レヴィ・フィーラー、ジョシュ・ケリー、マックス・アドラー。
カイルは非リア充のヘタレ男子です。片思いのジェスに近付くため、何故か廃墟の町に誘うという理解不能なセンスを見せます。しかし、ヘタレの浅知恵で事が上手く運ぶはずがありません。頼りがいのあるリア充であるロブがジェスとイチャイチャしながら来て、カイルと同じ非リア充ヘタレ男子仲間のベンも同行することになります。
この非リア充とリア充の組み合わせで動物パニック映画と言えば、名作『JAWS/ジョーズ』から脈々と続く黄金パターンです。同作で誰が人喰い鮫を退治したかを思い出してみましょう。そうです。本作も同じです。
本作では、凶暴な狼が人間を襲う話です。ところが、その肝心の狼が大きな犬にしか見えず、あまり怖くないという大きな欠陥を抱えています。おそらく狼ではなく、狼に近い犬種なのでしょう。どんなに凄んでも、モフモフして可愛いという感情が先立ちます。
また動物愛護の観点上、動物に無茶をさせられないという制約もあります。ロブが狼を棒で撲殺するシーンでは、狼を直接殴打する描写はなく、狼の死体は損傷のない綺麗な状態で、単に大きな犬が麻酔でスヤスヤ眠っているだけという、これまたモフモフして可愛い画を見ることになります。
怖くないスリラー映画に価値を見出すことは困難です。本作は製作と原案と撮影が同一人物(ロエル・レイネ)であり、実は彼がワンちゃんのモフモフ動画を撮りたいがために企画したのではないかと思ってしまうような出来です。
★☆☆☆☆(2018年3月2日(金)DVD鑑賞)
狼をアメリカ原住民のメタファーだと考えれば、話に少し深みが増します。