
何をやってもうまくいかず不満だらけの毎日を送っていた郵便局員エリック。そんな彼の前に、憧れの存在だったサッカー選手エリック・カントナが突然現われた。それ以来、カントナはエリックに様々なアドバイスをするようになり……(映画.comより引用)。2010年日本公開作品。監督はケン・ローチで、出演はスティーヴ・イヴェッツ、エリック・カントナ、ジョン・ヘンショウ、ステファニー・ビショップ。
イギリスの庶民生活をリアルに描かせたら定評のあるケン・ローチの監督作品です。映画の隅々をよく見ることによって、テレビや観光ガイド本が伝えないイギリスの現実を知ることができます。
どうでもいい話をすれば、主人公エリック(スティーヴ・イヴェッツ)が仲間たちと集まるパブで飲む、ビールの注ぎ方が日本と異なります。向こうは泡を立てずにグラスの縁ギリギリまでビールを注ぎます(『ショーン・オブ・ザ・デッド』でも、同じ注ぎ方でした)。それ故イギリス人が日本の酒場でビールを注文すると、泡の分だけ損した気になるらしいです。まあ、本当にどうでもいい話ですね。
映画の内容に話を戻しましょう。落ち込んでいるエリックを元気付けるため、仕事仲間が本で知ったばかりの自己啓発の方法を教えてくれます。エリックがそれを試してみたら、尊敬するエリック・カントナ(本人)の姿が見えるようになります。二人が「エリック」という同名であることから、エリックはカントナの姿を借りた自己と対話しているのです。すなわちタイトルの『エリックを探して』とは自分探しという意味になります。
カントナからのアドバイスによって自信を取り戻していくエリックに危機が訪れます。息子がギャングとのトラブルに巻き込まれるのです。エリックも危険な目に遭いながら、その解決方法を思いつきます。それは警察に頼らず、仕事仲間たちと協力してギャングの面目を潰すことです。
ここに警察=公権力は強権的なだけの役立たずで、名も無き庶民たちが団結して立ち上がることで危機的状況を変えられるという、ローチ監督の健全な反骨精神を見ることができます。
今の日本のネット界隈だと、ローチ監督は「左翼」のレッテルを貼られるでしょう。しかし、その「左翼映画監督」の作品は国際的に高い評価を受けています。もしかして日本で横行しているレッテル貼りの基準が外国で全く通用しないからではないでしょうか。先述したビールの注ぎ方の話と同じで。
★★★☆☆(2018年1月31日(水)DVD鑑賞)
エリックの仕事仲間のおじさんたちがイチャイチャしている様子も楽しいです。