【映画評】インターステラー | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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世界的な飢饉や地球環境の変化によって人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため、未知の宇宙へと旅立っていく元エンジニアの男の姿を描く(映画.comより引用)。2014年日本公開作品。監督はクリストファー・ノーランで、出演はマシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャスティン、ビル・アーウィン、エレン・バースティン、マイケル・ケイン。
 
ダークナイト』三部作で新しいバットマンのイメージを創造した、クリストファー・ノーラン監督によるSF大作です。宇宙への旅を題材にしたことで2001年宇宙の旅』との比較は避けられないどころか、むしろ同作を意識して作られたのではないかと思う部分が多くあります。
 
白い宇宙船が静かな宇宙空間に浮かんでいるビジュアルや、ハンス・ジマーの壮大さを感じさせる音楽は、『2001年宇宙の旅』で観たり聴いたりしたものに似ています。説明は省略されていますが、『2001年宇宙の旅』では地球が核戦争直前の危機にあるという設定でした。本作では地球が異常気象による食糧難という設定であり、人類滅亡の危機にある点で同じです。
 
人工知能を搭載したロボットが登場するのも共通しています。本作では、業務用冷蔵庫みたいな外観のロボット“TARS”が登場します。その冷たそうな外観と異なり、クーパー(マシュー・マコノヒー)たちを助け、時にはジョークも口にするTARSには愛着を感じます。『2001年宇宙の旅』のHAL9000とは大きく異なります(ちなみに本作で人間を裏切るのは機械ではなく、人間です)。
 
また本作のワームホールの描写は、『2001年宇宙の旅』のスターゲイトの描写に似ています。そして本作でブラックホールの内部にある、五次元の“彼ら”が作った空間と、『2001年宇宙の旅』でボーマン船長がスターゲイトを経て辿り着いた空間は、その意外性の点で似たものがあります。このように両作品に似た部分が多いのは、科学的考証に基づくリアルさを追求した結果であって、パクリだからではないでしょう。
 
しかし、ノーラン監督は『2001年宇宙の旅』のスタンリー・キューブリック監督と異なる独自色を出しています。それは観る者の緊張感を煽るサスペンス的演出です。水の惑星からの脱出、氷の星でクーパーを襲う危機、裏切り者による母船の乗っ取りは、いずれもタイムリミットを定めるというサスペンス演出の基本を用いています(時限爆弾はサスペンス物の定番ですね)。
 
終盤で、クーパーのいる宇宙とマーフ(ジェシカ・チャスティン)のいる地球の展開を並行的に進行させる、クロスカッティング手法を用いているのも観る者の緊張感を煽ります。この手法がノーラン監督の『インセプション』でも用いられ、しかも同作には無重力状態の描写もあることから、ノーラン監督は前の作品で得た経験を、しっかりと後の作品に活かしていると言えます。
 
また、サスペンス的演出だけでなく、時間も空間も超えて繋がる親子愛をテーマとしているのも、キューブリック監督との差異化です。キューブリックは愛なんかに興味がない人間ですからね(むしろ、それがキューブリック作品の魅力になりますから)。
 
鬼才キューブリック監督の名作と比較されるのを覚悟した上で、独自色まであるSF映画に仕上げたノーラン監督の勇気と挑戦は、本作のクーパー並みに称賛されるべきものです。
 
★★★★★(2018年1月13日(土)DVD鑑賞)
 
アン・ハサウェイがショートカットなのは『レ・ミゼラブル』で切ったからです。
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