
19世紀のロンドンで、金髪の女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生。そんな中、とある下宿屋に1人の男が部屋を借りに現われる。男の不審な行動から、周囲の人々は彼を犯人ではないかと疑いはじめるが……(映画.comより引用)。1926年製作のイギリス映画で2017年日本公開作品。監督はアルフレッド・ヒッチコックで、出演はアイヴァー・ノヴェロ、ジューン、マリー・オールト、アーサー・チェスニー、マルコム・キーン。
“サスペンス映画の巨匠”アルフレッド・ヒッチコック監督の第3作です(フィルムが現存する物としては第2作)。91年前の作品なので、白黒サイレント映画です。
ロンドンで女性ばかりを狙う連続殺人事件と言えば、有名な切り裂きジャック事件です。実際にあった事件を基に映画を作るのは、後の『サイコ』と同じです。同作はエド・ゲイン事件を基にしており、その制作過程は『ヒッチコック』で描かれています。『サイコ』はシャワールームでの惨殺シーンが見所で、本作でもデイジー(ジューン)が入浴中の浴室に怪しい下宿人(アイヴァー・ノヴェロ)が忍び寄るシーンがあるという共通点もあります。
本作の殺人鬼が金髪女性ばかり狙うので、金髪のデイジーも標的にされるのではないかと不安になります。後のヒッチコック監督作品でも、ヒロインの多くは金髪であり、そこも共通しています。何故金髪なのかと問われたら、ヒッチコックの趣味嗜好としか言い様がないですけどね。
サイレント映画という制約があるので、字幕を最小限にし、画だけで登場人物の関係や心情を表現するように工夫がなされています。突然現れた下宿人の挙動は怪しさたっぷりで、デイジーを殺そうとしているのではないかと疑いが濃厚になります。そして、その結末は……なるほど、あのパターンですね。本作はヒッチコックの原点であり、既に“魔術”を使っていたことを証明しています。
★★★☆☆(2017年11月30日(木)DVD鑑賞)
助監督のアルマ・レヴィルはヒッチコックの奥さんです。