【映画評】TOKYO TRIBE | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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さまざまなトライブ(族)に属する若者たちが、暴力で街を支配し、縄張りを競い合っている近未来のトーキョーを舞台に、「ブクロWU-RONZ」のヘッドに君臨するメラと、「ムサシノSARU」に所属する海(カイ)の2人を中心に巻き起こる一大抗争を描き出す(映画.comより引用)。2014年公開作品。監督は園子温で、出演は鈴木亮平、YOUNG DAIS、清野菜名、大東駿介、石田卓也、市川由衣、叶美香、中川翔子、佐藤隆太、染谷将太、でんでん、窪塚洋介、竹内力。
 
井上三太の漫画を原作に、台詞の応酬までラップになっている(でんでんも竹内力もラップ!)、おそらく史上初のヒップホップ・ミュージカル。エミネム主演の『8Mile』でも、そこまでやっていませんからね(同作はミュージカルではないので当たり前)。詩人でもある園子温監督は言葉を重視するので、本作の形式に適しています。
 
クラシック以外の楽曲はオリジナルスコアで、出演者に本業のラッパー(すなわち演技の素人)を大勢起用しており、そこは自主映画のようでもあります。自主映画出身の園監督にとって、メジャー映画を自主映画のノリで作るのは楽しかったでしょう(園監督の自主映画愛は『地獄でなぜ悪い』で分かります)。
 
自主映画のノリと言いながら、出演者は豪華というか奇抜です。叶美香のダイナマイトボディ、中川翔子のヌンチャクさばき、竹内力の濃厚ハイテンションは、インパクトが強烈過ぎます。しかし、終盤で彼らの見せ場が終了すれば、あっさりと“強制退場”させます。園監督は潔いです。
 
清野菜名がパンチラを気にせず、スピーディーな回し蹴りなど、ハードなアクションを見せてくれます。『愛のむきだし』の満島ひかりを更に進化させた形です。満島がNHKドラマ『トットてれび』で、清野がテレビ朝日系ドラマ『トットちゃん!』で、それぞれ黒柳徹子役に選ばれたのは、そうした女優魂が認められたからでしょう(「パンツ見せたら徹子になれる」という単純なことではありません)。
 
園監督は、路上でのゲリラ撮影を行い、現実に映画という虚構を持ち込む手法を用いてきました(自主映画時代ならまだしも『自殺サークル』や『HAZARD』の頃まで)。それに対して、本作は虚構を生み出す撮影所の中で自由に暴れたという感じです。ぶっ飛んだ世界観も、下品なバイオレンス描写も、虚構であれば有りです。そもそも本作はミュージカルですから、細かくリアリティを求めるのは野暮というものです。
 
しかし、本作の全てが嘘っぱちの絵空事ではありません。劇中で度々地震が起こるのは、東日本大震災を連想させます(『ヒミズ』と『希望の国』で、いち早く東日本大震災を映画に取り入れた園監督ですから)。そして、メラ(鈴木亮平)が海(YOUNG DAIS)を敵視する理由に戦争をしたがる者の愚かさを、海たちが仲間を守るために戦う姿に平和を求める勇気を見出し、現実世界とのリンクを感じるのです。
 
★★★★☆(2017年11月25日(土)DVD鑑賞)
 
現在リハビリ中のプロレスラー高山善廣も出演しています。
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