桑田佳祐のニューアルバム『がらくた』の感想文です。私にとって夏休みの宿題みたいなものです。

13曲目『Yin Yang(イヤン)』の「イヤン、おっぱい、いやん!! いやん、触っちゃイヤン!!」というコーラスは林家木久扇チックであり、12曲目『ヨシ子さん』の曲名は先代の林家三平チックです。また、昨年のNHK音楽番組『SONGS』や『がらくた』リリース発表のトレーラーで、桑田は波乗亭米祐なる落語家を演じています。
桑田の趣味は落語鑑賞であり、それが作詞における独特な言語感覚の糧になっていると言えます。ちなみに、桑田が芸名を授けた嘉門タツオが元落語家(笑福亭笑光)という縁で、桂雀々とも親交があり、立川志の輔がサザンオールスターズのファンであることを公言しています。
落語家やお笑い芸人は、本芸の他に大喜利で笑いの腕を見せます。演芸番組『笑点』のメインコーナーでもあり、出された御題に対してアドリブで面白い回答をするものです。実は、近年の桑田は大喜利のような創作活動をしています。タイアップを先に決め、そのコンセプトに合った楽曲を作るというスタンスなのです。桑田ほどのベテランだと、音楽の引き出しが多いのでオファーに対応でき、創作のモチベーションアップにもなります(アルバム収録曲でタイアップがないものは、外部からの刺激ではなく、桑田の内なる創作意欲から生まれたと言うことができます)。
3曲目『大河の一滴』はUCC BLACK無糖TVCMソングなので、「黒の円熟が薫りました」という歌詞があります。7曲目『君への手紙』は映画『金メダル男』主題歌で、「ひとり 夢追って 調子こいて こんな男のために よく まぁバカが集まったな」という歌詞は、作品内容と桑田自身の人生をリンクさせたもののようです(映画未見なので断言できません)。
5曲目『愛のプレリュード』と11曲目『オアシスと果樹園』は、ともにJTBのCMソングです。桑田本人が出演しているCMはハワイでロケを行っているので、「ハワイ」という御題が出されています。それに対し、前者は長年一緒にいる相手への内に秘めた片思いを、後者は昔の恋人を想って旅に出る男の心情を、それぞれ異なる曲調で歌うという、座布団三枚もらえるような高レベルの回答をしています。
9曲目『百万本の赤い薔薇』は、フジテレビ系ニュース番組『ユアタイム~あなたの時間~』テーマソングです。番組のメインキャスターが市川紗椰なので、歌詞に「紗椰」が使われています。しかし、特製ブックレット「がらくた」で「原さんに丸投げした」と言うほど、同曲は桑田の妻である原由子の協力によって作られ、ブックレットには彼女への称賛と感謝の言葉が並んでいます。この曲で「情熱の女神」や「愛しい人」と歌われているのは市川紗椰ではなく、実は原由子であり、もっと言えば、桑田が百万本の赤い薔薇を贈りたいのは全ての女性であるという女性讃歌ではないかとも思うのです。
余談ですが、前に当ブログで『百万本の赤い薔薇』の感想文を書いた時、市川紗椰を「ニュータイプの“おやじキラー”」と評しました。最近『ユアタイム』で共演している20歳年上の野島卓アナウンサーとの交際報道が出たことで、私の目に狂いは無かったと確信しました。
「がらくた 桑田佳祐」で検索するってえと……。