
お調子者の主人公・源等(みなもとひとし)が、派閥争いの中で双方に取り入り、タイミングとC調で成功を収めていく(Yahoo!映画より引用)。1962年公開作品。監督は古沢憲吾で、出演は植木等、ハナ肇、谷啓、安田伸、犬塚弘、石橋エータロー、桜井センリ、団令子、藤山陽子、中真千子、草笛光子、中島そのみ、ジェリー伊藤、由利徹。
前作『ニッポン無責任時代』のヒットを受けて作られた姉妹編(ラストを見れば、続編という気もします)。前作の主要なスタッフとキャストが続投していることもあり、更にノリが良くなっています。古沢憲吾監督のスピーディーな演出で快く押し切るコメディです。
クレージー・キャッツの「無責任一代男」「ショボクレ人生」「ハイそれまでョ」「これが男の生きる道」「ゴマスリ音頭」「やせがまん節」「のんき節」が劇中で歌われます。これらの楽曲の作詞は青島幸男の手によるものです。サラリーマンの心情を歌ったとされる楽曲ですが、青島自身にサラリーマン経験はありません。すなわち青島が想像上のサラリーマン像を表現したにもかかわらず、現実のサラリーマンにハマってしまうという不思議な社会現象が起こっていたのです。
C調で無責任な源(植木等)は、周囲の人間に迷惑をかけながらも、上手く世渡りしていきます。厳密には犯罪に当たることもしでかしています。現在の映画やテレビドラマで同じことをやれば、不謹慎だとネットで叩かれそうです。しかし、欧米のコメディ映画やドッキリ番組では、本作レベル以上の酷いことを平気でやっています。作り手と受け手の双方に現実と虚構は異なるという理解がある国と、そうでない国の違いでしょう。
無責任野郎である源の恋人役として、無責任姐ちゃん(団令子)も登場します。無責任姐ちゃんは、家計は夫婦で割り勘し、家事は夫婦で分担するというドライな生活方針を打ち出します。本作の公開当時は、これが非常識に思われたのでしょうけど、今となっては合理的で時代に合ったライフスタイルです。
前述した青島のサラリーマン像もそうですが、無責任姐ちゃんの生活方針も時代を先読みしたからではなく、現実の大衆がそれを真似ていったから、違和感が無くなったのでしょう。それは、映画というメディアが強い影響力を持っていた黄金時代だからこそ可能だったと思うのです。本作は、そんな黄金時代の賜物です。
★★★☆☆(2017年7月25日(火)DVD鑑賞)
主人公が二つの派閥の間で立ち回るのは『用心棒』のようでもあります。