
メリンダはさほど幸せとはいえない生活を送っていた。半身不随なダウン症の兄。売れない音楽家で精神不安定の父。兄を虐待する母。物事の善悪の区別が付かないまだ幼い弟。メリンダは兄を守るように生活していたが、もうすぐ父親のいない子供を生んで、家族を離れようとしていた。彼女にとって一家団欒は、もちろん楽しいものではない。しかし、彼女の本当の悪夢は、まだ始まっていなかった。突然外へ出る全ての扉や窓が閉ざされてしまう。そして、二階に謎の扉が現れた…(allcinemaより引用)。2006年製作のベルギー映画で日本劇場未公開作品。監督はジル・ダオーで、出演はパスカル・デュケンヌ、カロリーヌ・ヴェイ、フィリップ・レジモン、フランソワーズ・ミニョン。
ベルギー映画で観たことがあるのは、『ありふれた事件』と『少年と自転車』しか記憶にありません。国土がフランスとドイツに挟まれており、合作映画となることが多く、目立たないので話題になることが少ないからでしょうか。
『ありふれた事件』は問題作でしたが、本作もまた問題作の部類に入ります。上記あらすじのとおり、多少モラルに反する内容だからです。山田洋次でも手に負えなさそうな訳あり家族が、閉鎖的空間で本性や秘密を暴露していくという、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』や『ミスト』と同種の嫌な感じを味わえます。
冒頭から『シャイニング』のアニメ版(登場人物がウサギに戯画化されている)が挿入されています。「閉鎖的空間で人が狂っていく」という点で内容が共通しているからでしょうか。本作の映像表現が割と凝っているので、もしかしたらジル・ダオー監督がスタンリー・キューブリック好きなだけかもしれません。
摩訶不思議な状況が展開し、謎はどんどん深まります。そして悪夢のような本作の結末は……「さんざん大風呂敷を広げて、それかい!」という気持ちになるものです。
★★☆☆☆(2017年5月20日(土)DVD鑑賞)
兄の名前がアレックスなのは『時計じかけのオレンジ』から?