
北朝鮮で武器の密輸に携わるムーン大佐を暗殺したボンドは、その直後に敵に捕らえられ拷問を受ける。14カ月後、逮捕されたムーン大佐の側近ザオとの捕虜交換によってボンドはようやく解放されるが、Mはボンドが情報を漏洩したと疑い諜報員の資格を剥奪。ボンドは自らにかけられた疑いを晴らすため、ザオを追ってキューバへと向かう(映画.comより引用)。2003年日本公開作品。監督はリー・タマホリで、出演はピアース・ブロスナン、ハル・ベリー、トビー・スティーヴンス、ロザムンド・パイク、リック・ユーン、ジョン・クリース、ジュディ・デンチ。
ピアース・ブロスナンが最後のジェームズ・ボンド役を演じた『007』シリーズ第20作です。ボンド役を演じると、そのイメージが付き過ぎて、ボンド卒業後の仕事がパッとしなくなるという前例があります。『マンマ・ミーア!』に出演しているブロスナンを見ると、その前例に該当しているような気がしてきます(ショーン・コネリーはヅラを取るという大胆なイメージチェンジで前例から外れた?)。
第20作という節目ということで、過去の作品へのオマージュがあります。ボンドガールのジンクス(ハル・ベリー)がビキニ姿で海から上がってくるシーンは、『007 ドクター・ノオ』からであり、Q(ジョン・クリース)の研究室には、過去の秘密兵器が並んでいます。
ハル・ベリーがセクシーかつ格好良いボンドガールを演じています。本作の前に『チョコレート』での濡れ場も辞さぬ体当たり演技でアカデミー主演女優賞を受賞し、本作の後の『キャットウーマン』でラジー賞最低主演女優賞を受賞しながらも授賞式に出席するという懐の大きさを見せる、本当に格好良い女性です(ラジー賞受賞は不名誉なことなので、ほとんどの俳優が授賞式を欠席します。最低主演女優賞受賞者で出席したのはハル・ベリーとサンドラ・ブロックだけで、二人とも格好良い女性です)。ハル姐さんが怒ると、嵐を呼びますよ!(『X-MEN』シリーズより)
本作で悪役となるのは、北朝鮮です。本作公開時は金正日政権でしたが、映画会社に対する抗議等は無かったと記憶しています。後に金正恩暗殺をテーマにしたコメディ映画『ザ・インタビュー』に対しては、北朝鮮からの非難声明や映画会社に対するサイバー攻撃がありましたけどね。金正日と金正恩の性格の違いではなく、単に本人役が登場しているかどうかで対応が変わっただけでしょう(ちなみに金正恩は『007』シリーズのファンらしいです)。
『007』シリーズは洒落っ気のある荒唐無稽なアクションが売りでもありましたが、現実味のあるシリアスさを求める客層も意識せざるを得ず、そのバランスに苦闘してきた感があります。『ミッション:インポッシブル』シリーズのイーサン・ハントや、『ボーン』シリーズのジェイソン・ボーンという新世代のライバルたちの台頭を受け、次回作『007 カジノ・ロワイヤル』からは、ダニエル・クレイグが新しいボンド像を作り上げていくことになります。
★★★☆☆(2017年4月22日(土)DVD鑑賞)
ムーン(Moon)大佐は、偶然にも韓国の文在寅(Moon Jae-in)大統領と同じ苗字です。