【映画評】X-MEN:フューチャー&パスト | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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未来から過去へと送り込まれたウルヴァリンや、超人的パワーを持つX-MENのメンバーが、二つの時代を舞台に地球の危機を救うべく戦いを繰り広げるSFアクション(Yahoo!映画より引用)。2014年日本公開作品。監督はブライアン・シンガーで、出演はヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ハル・ベリー、エレン・ペイジ、ピーター・ディンクレイジ、イアン・マッケラン、パトリック・スチュワート。
 
マーヴェル・コミックの実写化作品で、本作によって『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』と『X-メン』が繋がってきます。更に言えば、スピンオフである『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』にもリンクしています。
 
X-MEN2』で降板したブライアン・シンガーが監督に返り咲いています。シンガーの降板理由は『スーパーマン リターンズ』を監督するためでした。当初、本作の監督を務める予定だったマシュー・ヴォーンが、『キングスマン』を監督するために降板したことを思えば、何やら運命のようなものを感じます(『キングスマン』もコミックが原作ですから)。
 
「時をかけるおっさん」状態のウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)が主役です。ウルヴァリンは原作と比較すれば、かなりビジュアルが異なります。日本で漫画を実写化すれば、ちょっとデザインを変えただけで、まだ作品を観てもいない原作ファンが「原作レイプだ!」などと騒ぎ出します。1作目の『X-メン』では、アメリカの原作ファンから、そのような批判もあったでしょうが、現在ではスピンオフ作品(『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』、『ウルヴァリン:SAMURAI』と『LOGAN/ローガン』)が作られるほど定着しています。作り手側の創意工夫の賜物です。
 
ジェニファー・ローレンスが演じるミスティークがエロいです。ほぼ全裸ですからね。ローレンスを観たのが『世界にひとつのプレイブック』と『アメリカン・ハッスル』しかない私は、彼女に「実年齢よりオバサンに見える」という印象を持っています。しかし、本作ではそれを感じませんでした。どう見ても、ミスティークは年齢不詳ですから。
 
本作における二つの時代を交互に見せる構成は、観客を退屈させません。細部まで突けば、タイム・パラドックスの問題はあるでしょうけど、それをあまり感じさせない勢いがあります。両時代のミュータントの危機をクロス・カッティングで見せるクライマックスは、『ゴッドファーザー』シリーズでも用いられた効果的な演出です。
 
また、誰にでも変身できるミスティークの存在が、ストーリーを引っ搔き回してくれます。江戸川乱歩のミステリー小説に登場する怪人二十面相みたいなものです。正体を現した時に、「そこにおったんかーい!」というサプライズを味わえます。
 
そのような娯楽性だけでなく、深みのあるテーマもあります。突然変異により特殊能力が備わったミュータントは、普通の人間から見ればマイノリティーです。そしてミュータントを自らの研究に利用するトラスク博士を小人症のピーター・ディンクレイジが演じ、監督のシンガーと老年期のマグニートーを演じるイアン・マッケランはゲイであることを公表しています。本作は世間からの差別や偏見に向き合うマイノリティーの物語でもあるのです。それ故、ミュータントの存続という目的を同じくしながら、人間に対して非暴力で共生しようとするプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ/パトリック・スチュワート)と暴力で対抗しようとするマグニートー(マイケル・ファスベンダー/マッケラン)の姿を、アメリカ黒人の公民権運動におけるキング牧師とマルコムXに重ね合わせる解釈もあります。
 
目的は同じでありながら、その方法が異なるために対立や衝突が生じるのは、虚構であるミュータントの世界だけでなく、現実の人間世界でも珍しくないことです。
 
★★★★☆(2017年3月31日(金)DVD鑑賞)
 
ウルヴァリンが活躍する最新作『LOGAN/ローガン』は6月1日公開予定です。
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