
地球破壊を狙う実業家ゾリンとイギリスの諜報部員ジェームズ・ボンドの対決を描くスパイ・アクション(映画.comより引用)。1985年日本公開作品。監督はジョン・グレンで、出演はロジャー・ムーア、タニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ、パトリック・マクニー、クリストファー・ウォーケン。
『007』シリーズ14作目にして、ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じた最後の作品になります。アクション・シーンが盛り沢山で、ムーア版ボンドの集大成のような出来です。
ムーアは3代目ボンドで、初代であるショーン・コネリーより多くボンド役を演じているにもかかわらず、『007』ファンの多くはボンド=コネリーをイメージします。ボンドはアストンマーティンに乗るとか、ドライ・マティーニを飲むとかはコネリー版ボンドで定着した決まり事ですからね(ムーア版ボンドはアストンマーティンに乗らず、ドライ・マティーニを自ら注文したことがありません)。コネリーより3歳年上のムーアには、何とも苦労が報われていない感があります。
しかもコネリーは『007』以外の出演作(『アンタッチャブル』や『レッド・オクトーバーを追え!』など)でも評価されているのに対し、ムーアはボンド役以外が、ほとんど評価されていないという悲しいことになっています。『キャノンボール』でもボンド役を求められたほどです。もはや渥美清における車寅次郎役に匹敵するレベルで、役に縛られまくっています。
そんなムーアが本作でボンド役を演じたのは57歳の時です。アクション・シーンの大半は引きの画が多いので、スタントマンを使った吹き替えだと分かります。体力面の他に、ボンドがプレイボーイである設定にも年齢ゆえに無理が生じています。ムーアが本作でボンド役引退を決意したのは正解でしょう。
本作は公開時にヒットしましたが、後にシルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーなど筋肉マッチョ系アクションスターが台頭してきたので、ムーアのボンド役引退はアクション映画の転換期を象徴する出来事であったとも言えます(ちなみにスタローンは60歳を過ぎても『エクスペンダブルズ』で大暴れする恐ろしいタフガイです)。
★★★☆☆(2017年3月27日(月)DVD鑑賞)
クリストファー・ウォーケンが演じた敵役はデヴィッド・ボウイも候補に挙がっていたそうです。