【映画評】逃走迷路 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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カリフォルニアの航空機工場で大規模な火災が発生し、男性従業員が命を落とす。被害者の同僚であるバリー・ケインは、事件現場でガソリン入りの消火器を持っていたことから容疑者とみなされ、警察から追われる身となってしまう。ケインは自分に消火器を手渡した男フライが真相を知っていると考え、行方を追うが……(映画.comより引用)。1942年製作で1979年日本公開作品。監督はアルフレッド・ヒッチコックで、出演はロバート・カミングス、プリシラ・レイン、ノーマン・ロイド、オットー・クルーガー、アラン・バクスター。
 
濡れ衣を着せられた男の逃亡劇という設定は、アルフレッド・ヒッチコック監督が後に手がける『北北西に進路を取れ』と同じです。キャリアを積んだヒッチコックが、同じような題材をもっと上手に料理できるかという動機付けで『北北西に進路を取れ』を監督したのではないかと想像します。
 
サスペンスの巨匠と呼ばれるヒッチコック監督だけに、観客をハラハラさせる演出は流石の腕前です。バリー(ロバート・カミングス)が自動車のファンで手錠を切断するシーンや、戦艦アラスカ号が造船所で爆破されるかどうかのシーンでは、巧みなカット編集で緊張感を煽ります。バリーら登場人物に「時間がない」という台詞を何度も言わせているのも、観客を焦らせるテクニックの一つでしょう。
 
最初の飛行機工場の火災シーンや、終盤の自由の女神像内での追跡シーンは、大掛かりなセットやロケーションで撮影されており、金がかかっている感じがします。本作の制作当時、日米間は太平洋戦争の最中であり、アメリカの国力の余裕ぶりを日本国民に知らせないために、日本では上映されなかったのでしょうね(その結果、日本がどうなったかは歴史が証明しています。「彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし」と孫子の兵法にもあります)。
 
ヒッチコック作品では、政治的なものは単にサスペンスを盛り上げるための「装飾」にすぎないイメージがあります。しかし、本作には戦争(第二次世界大戦)の影が落ちています。バリーを陥れるのがナチスドイツの工作員であることだけでなく、バリーが真実を語っても信じてもらえず、パット(プリシラ・レイン)が愛国心を示すかのようにバリーを警察に突き出そうとするのは、戦時下に蔓延する空気感です。
 
そう思えば、バリーの無実を信じるのが、パットの叔父で盲目のミラーや、フリークス(畸形)だらけのサーカス団だというのも意味ありげです。当時のナチスは障害者を「社会に不要なもの」として「処分」する蛮行を犯しており、ミラーやサーカス団が真実を見抜くというのは、ナチス批判になるからです。
 
★★★☆☆(2017年1月20日(金)DVD鑑賞)
 
盲目のミラーが逃亡者のバリーを助けるのは、『フランケンシュタインの花嫁』に似ています。
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