【映画評】女獄門帖 引き裂かれた尼僧 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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島守俊夫原作の『女地獄獄門帖』から、駈け込み寺を舞台に、そこにうごめく女達の狂気の性を赤裸々に描く(映画.comより引用)。1977年公開の成人映画。監督は牧口雄二で、出演は田嶋はるか、ひろみ麻耶、芹田かおり、成瀬正、小林稔侍、汐路章、志賀勝、佐藤蛾次郎、折口亜矢。
 
徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』(以下『牛裂きの刑』)と同じ牧口雄二監督の東映エログロ時代劇です。主役スターになれない大部屋俳優たちが頑張る中『牛裂きの刑』でサディスト殿様を演じた汐路章と“葛飾柴又から来た源公”佐藤蛾次郎がコミカルな掛け合いを見せたり、志賀勝が暗黒舞踏チックに白塗りでイカレた寺男を演じたりしていたのが印象に残ります(DVDジャケットの右上にいるのが志賀ですが、本作中とビジュアルが全く異なります。昔の東映らしい仕事ぶりです)。
 
山奥の駆け込み寺に来た男たちが惨殺されるという設定は、サイコ』や『悪魔のいけにえ』によく似ています(と言うかパクリ?)。寺男が死体を寺付近にある沼に投棄することまで『サイコ』と同じです(と言うかパクリ?)。
 
悪趣味なエログロ描写たっぷりで、レズビアン濡れ場シーンや首なし死体をお目にかかれます。これら狂気の沙汰を尼寺で行っているのが、何とも背徳的で罰当たりな感じを出しています。かつてアメリカにあった映画検閲コード(ヘイズ・コード)の三本柱である「性・暴力・宗教冒涜」によれば本作は完全にアウトです
 
尼寺の庭に芥子の花が群生しており、尼僧は阿片を吸引しています。愛した男を殺された主人公がショックで絶望するシーンが、急にサイケデリックなセットでのスタジオ撮影になったり、終盤で尼寺が炎上する中、御本尊の即身仏が立ち上がるサプライズがあったりするのは、ドラッグによるトリップ状態(幻覚症状)を意識した演出なのかもしれません(終盤のサプライズは『キャリー』のようでもありますが)。
 
『牛裂きの刑』と同じ監督と脚本家なので、地獄はあの世ではなく現世にあるというテーマは共通しています。尼寺で養われた唖の少女が地獄絵図を前に、女として人としての「業」に目覚め、それでも生きていくというラストシーンまでの流れは叙情的にまとめられています。しかし、私としては上手くまとまっていることに物足りなさを感じるのです(エログロを尽くしながら、強引に叙情的なラストにするのは、牧口が『徳川女刑罰史』で助監督に付いた石井輝男の得意技です)。
 
★★★☆☆(2016年12月23日(金)DVD鑑賞)
 
寺男が「猪の肉」と言って解体しているのが人肉であれば、タブー抵触感増し増しです。
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