
高校生の高畑瞬は、退屈な日常にうんざりしていたが、ある日突然、教室にダルマが出現し、命をかけた授業の開始を告げる。ダルマや招き猫、コケシ、シロクマ、マトリョーシカといった物たちが不気味に動き出し、彼らが出す課題をクリアできなかった者には、容赦のない死が待ち受けていた(映画.comより引用)。2014年公開作品。監督は三池崇史で、出演は福士蒼汰、山崎紘菜、染谷将太、優希美青、大森南朋、リリー・フランキー、神木隆之介。
『テラフォーマーズ』の大コケで、「実写化爆死メーカー」のレッテルを貼られている三池崇史監督の漫画実写化作品です。長年、三池作品を愛好している者から言わせれば、三池にオファーしている作り手の方に「爆死」の責任があると言いたいです。昔から三池は来たオファーを基本的に断らず、脚本を自分流に変更するスタンスであることを知らないのでしょうか。『クローズZERO』などのヒットや海外での高評価というマーケティング的な部分しか見ていないのでしょうね(『クローズZERO』や『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』はヤンキーやヤクザという三池の得意分野だからハマったのであり、海外での高評価は発想の奇抜さが理由なので、原作どおりの実写化に三池は向かないのです)。
三池が真価を発揮するのは、『殺し屋1』のようなグロとギャグが混在しているカオスな(と言うか、気の狂った)世界を描く場合なので、本作は三池の持ち味を出しやすい題材です。本作は高校生がたくさん死ぬという点で『悪の教典』に似ています。しかし本作の場合、主人公が生徒で、サイコパスなキャラクターが生徒側に配置されているのに対し、『悪の教典』の場合、主人公が教師で、彼がサイコパスなキャラクターであるという違いがあります。仕事とは言え、同じ話を撮るのは飽きてしまうので、変化を加えたのでしょう。
ちなみに『悪の教典』を鑑賞したAKB48(当時)の大島優子が強い嫌悪感を示したのに対し、同じAKB48出身の前田敦子は本作で生徒を惨殺する招き猫の声を演じています。ちょっとしたトリビアです。
冒頭から生徒の頭が爆発するグロ描写を連発し、まともな死に方をする登場人物の方が圧倒的に少ない本作です。良識派からの批判の対象になりやすいグロ描写は、退屈な日常のありがたみを強調するための逆説であり、多くの反戦映画で凄惨な戦場が描かれるのと同じことです。また不条理なルール下で生き残るためのゲームが行われるのは、大国が押し付けたルール下で容赦ない弱肉強食がなされるグローバル社会の戯画化のようでもあります。
本作は奇想天外な悪ふざけのようでありながら、変に深読みできる映画です。
★★★★☆(2016年12月9日(金)インターネット配信動画で鑑賞)
シロクマの声を演じているのが山崎努というキャスティングは面白いです。