
江戸時代の貧乏長屋を舞台に、人を信じ愛することを信条とするひとりの母親を巡る人情ドラマ(映画.comより引用)。2001年公開作品。監督は市川崑で、出演は岸惠子、原田龍二、うじきつよし、勝野雅奈恵、石倉三郎、宇崎竜童、中村梅雀、春風亭柳昇、コロッケ、江戸家小猫、尾藤イサオ、常田富士男、小沢昭一。
本作の製作委員会には、シナノ企画の名があります。シナノ企画は創価学会関連の映像製作会社です。アンチ創価学会の人は「そんな所が作った映画は観ねえ!」と言うかもしれません。それでは、『砂の器』と『八甲田山』もシナノ企画の製作ですので、この二作品も観てはいけないことになります。それは人生で損をすることです。片意地を張らず、単純に映画として楽しみましょう。
市川崑監督なので、映像的に一風変わった時代劇になっています。短いカットをテンポ良く繋いだり、「シルバーカラー」という現像技術で独特の色調にしたりしています。市川監督は、岸惠子主演の『おとうと』で「銀残し」という現像技術を用いて、モノクロ映画のような独特の印象を作り出しており、本作でも同様の効果を狙ったものと思われます。
本作の脚本は和田夏十と竹山洋の二人になっています。しかし、市川監督の妻である和田は1983年に亡くなっているので、和田の遺稿を竹山が脚色したということです。
そうなると気になってくるのは、説明的な台詞です。時代劇なので、ある程度の観客に対する説明は必要だとしても、時代設定とは関係ない部分も台詞で説明しようとしている節があります。それが和田の遺稿そのままなのか、竹山の脚色部分なのかは分かりませんけど。
ただ市川監督は、『犬神家の一族』で金田一耕助が自分の推理を披露する、謎解きのシーンをあれほどテンポ良く、退屈させずに演出した名匠です。説明的な台詞も面白くできると思いきや、中村梅雀、春風亭柳昇、コロッケ、江戸家小猫が状況説明の狂言回し役を演じるシーンが面白くないという、残念なことになっています。演芸のプロフェッショナルを揃えているにもかかわらずです。
また、岸が演じるかあちゃんが良いことを言うシーンの度に流れる、同じBGM(宇崎竜童作曲)はどうなのでしょう。何か観客に感動を押し付けているような感じがします。日本的ウェット感より、クールでスタイリッシュな感覚を重視する和田の意図に反する演出です。
結局、市川監督は和田とコンビを組んでいた時代が盛りで、和田が亡くなってからの作品は格落ちするのだと改めて分かりました。
★★☆☆☆(2016年12月1日(木)DVD鑑賞)
勝野雅奈恵はテキサス刑事(勝野洋)とキャシー中島の娘ですね。