映画界とアニメ界の共通点について | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

『君の名は。』130億円超えの大ヒットでも新海誠監督が“エロゲー出身”を隠さないワケ

 
新海誠監督の『君の名は。』のメガヒットは日本の映画史の歴史を塗り替えようとしている。アニメ作品で興行収入が100億円を突破したのは、ジブリの宮崎駿監督の作品以外では初となり、現在は130億円にまで到達している。2016年に公開された映画ではトップだ。この作品で新海誠というアニメ監督の名前を知ったという人は多いだろう。来場者数も延べ1,000万人を超え、製作総指揮を務めた東宝の古澤佳寛氏はTwitter(@yottkun)で、同作について「今後のTOHO animation作品の更なるチャレンジを可能にするヒットになりました!嬉しい!」と、この作品がいかに大きな結果を残したかを述べている。
 
確かに一般的にはさほど知られていなかったであろう監督の作品が、ここまで記録を塗り替えるのは大事件であり、その反響は社会現象といえるほどに大きく広がっている。長編作品から引退した(とされる)宮崎監督の後継者とまでささやかれ始め、新海監督はこの作品でアニメ界の新時代の可能性を切り拓くに至った。しかし、切り拓いたのはアニメ界だけではない。
 
もともと新海誠監督は『ほしのこえ』、『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』など胸を締めつける切ない青春劇を得意とし、観る人によっては“鬱アニメ”になりかねない作品を発表してきた。アニメ作品でありながらも、どこか純文学のような雰囲気を兼ね備えたストーリーと驚異的な映像美でアニメファンに支持されており、特に『秒速5センチメートル』は傑作と評価するアニメファン・映画ファンも少なくないが、どちらかというと知る人ぞ知る監督であった。
 
知る人ぞ知るという面で、案外知られていないのが、新海監督は18禁美少女ゲーム、いわゆるエロゲーのOP(オープニングムービー)を制作していたことだ。新海監督の公式HPにも、「minori作品オープニング」としてコーナーが用意されている。新海監督が世間から注目を集めたのは、たった一人で作り上げた短編映画『ほしのこえ』だが、今振り返るとminori作品のオープニングに『君の名は。』で見られる映像美がすでに存在していることがわかる。
 
新海監督は01年にリリースされたminoriのデビュー作『BITTERSWEET FOOLS』から『ef - the latter tale.』(08年リリース)まで関わっているが、特に注目したいのがTVアニメ化もされた『ef』シリーズの『ef - the first tale. 』(06年リリース)と『ef - the latter tale.』だ。この両作は今の新海作品に通じる圧倒的な映像美をもって作られており、当時ある意味エロゲーのOPとしては、バックに流れる天門氏の楽曲との相乗効果もあり、頂点ともいえる完成度を誇っていた。
 
『ef』のオープニングの持つ美しさは、空の描き方、構図や演出など『君の名は。』にも通じている箇所が多く見られる。『君の名は。』のファンであれば、すぐに共通点が理解できるはずだ。逆にいえば、新海監督の『秒速5センチメートル』以降のアニメ作品の演出などは全て『ef』に通じていると言えなくもない。
 
有名になると、エロゲーなどアダルトな業界と関わっていたことをマイナスと捉え、隠す傾向があるが、新海監督はそういった動きは一切見せない。それはきっと、彼をこれまで支えていたファンが、どちらかというとニッチでマニアックな層だったからであろう。新海監督が一気にメジャーとなった今、minoriの作品も少しずつだが注目を集めているようだ。
 
かつて『魔法少女まどか☆マギカ』(毎日放送ほか)の社会現象化によりエロゲ―メーカー・ニトロプラスの虚淵玄が一般層にも知れ渡り、『仮面ライダー鎧武』(テレビ朝日系)といったまさかのスーパーメジャーコンテンツの脚を担うことになったのは記憶に新しい。新海監督のメジャー化によってminoriの作品が再評価され、ひいてはエロゲー・美少女ゲームが持つクオリティの高さや可能性が見直されるかもしれない。そういった意味でも『君の名は。』のメガヒットは新たな可能性を含んだ大事件なのだ。
(文=Leoneko)
転載元:おたぽる
 
【ここから私の意見】
 
大ヒットアニメ映画『君の名は。』の新海誠監督がエロゲー出身者であるという記事です。この記事を読んで思ったのは、これは日本映画界と共通した現象だということです。日本映画界を支えてきた作り手には、成人映画(日活ロマンポルノとピンク映画のこと)出身者が多いからです。詳しくは過去記事「日活ロマンポルノの復活について思う」で触れています。ざっと読んでいただけたら、記事内容の重複がなくて楽です。
 
更に深読みすると、『君の名は。』を製作した東宝が、これまで宮崎駿作品を中心とするジブリアニメでヒットを飛ばしており、新海監督をその後継者と見ていることも、日本映画史における一時代を思わせます。それは角川春樹がトップだった頃の角川映画です。
 
1970年代の角川映画は、『犬神家の一族』の市川崑、『人間の証明』の佐藤純彌、 『復活の日』の深作欣二という撮影所出身の監督が中心でした。ジブリの宮崎監督は東映動画出身ですから、「撮影所出身の監督」と言えます。角川映画とジブリアニメは、広くメディアを使った大宣伝を仕掛ける点も似ています。
 
その後、1980年代の角川映画は、若手監督を起用することで日本映画の新時代を切り開こうとします。『セーラー服と機関銃』の相米慎二、『メイン・テーマ』の森田芳光、『二代目はクリスチャン』の井筒和幸などを起用しましたが、彼らは成人映画の撮影現場で修行を積んだり、成人映画を監督したりした経験があります。また、監督以外のスタッフに成人映画と関わった者がいる作品も多々あります。
 
当時の角川映画では、『時をかける少女』の大林宣彦も活躍していました。大林監督は撮影所システムを経験していない自主映画出身です。成人映画も自主映画もメジャー映画会社の撮影所で作られたものではなく、その出身監督は「非・撮影所出身の監督」です(日活ロマンポルノの場合、黄金期の日活撮影所とは別物という解釈で)。エロゲーやマイナーな作品を作ってきた新海監督も「非・撮影所出身の監督」ということができます。
 
今後、東宝のアニメ製作事情や新海監督の活躍がどうなるかは分かりません。角川映画と同じ運命を辿るかは分かりません。ただ、映画とアニメという異なるジャンルに、成熟すると似たような現象が生じることに小さな驚きを感じるのです。
 
イベントバナー

 

にほんブログ村 映画ブログに参加しています(よろしければクリックを!)