
学校でいじめられている孤独な少年オーウェンは、近所に越してきたばかりの少女アビーと出会う。お互いに孤独な2人はやがて心を通わすようになるが、アビーにはある秘密があった(映画.comより引用)。2011年日本公開作品。監督はマット・リーヴスで、出演はコディ・スミット=マクフィー、クロエ・グレース・モレッツ、リチャード・ジェンキンス、イライアス・コディーズ。
舞台設定はニューメキシコ州のはずですが、あそこって雪が降りますかね? 本作がスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のリメイクなので、オリジナルに合わせたのでしょうか? それとも魔性の者が訪れたことで異常気象になったのでしょうか? オリジナル未見なので分かりませんけど。
主人公オーウェン(マクフィー)の「信心深い母親と二人暮らしのイジメられっ子」という設定は、アビー役のモレッツが後に主演したリメイク版『キャリー』の主人公キャリーに似ています。『キャリー』より先に、本作でもモレッツは血を浴びてしまいます。
本作の邦題は、オーウェンとアビーがアパートの壁をノックすることで交流する「モールス信号」から名付けられました。しかし、作品中でこの「モールス信号」の重要性は低く、題名にふさわしいか疑問です。だからと言って、原題の「LET ME IN」を和訳すれば、「私を入れなさい」となり、この題名でモレッツがメインキャストだと、児童ポルノ感が出てくるので、『モールス』でも良いのかもしれません。
本作の時代設定は1983年であり、当時のロナルド・レーガン大統領が「強いアメリカ」を正義とする、マッチョイズムが主流だった時代です。マッチョイズムは排他的で「異物」を高圧的かつ暴力的に排除しようとします。ひ弱なオーウェンも「異物」扱いされ、学校でひどくイジメられます。しかし、オーウェンは自分を鍛え、強くなることで「異物」から脱する道を選びませんでした。それはマッチョイズムの軍門に下ることになるからです。そうではなく、オーウェンは本当の「異物」であるアビーを受け入れることで、自分も善悪の彼岸にある「異物」として生きる道を選びます。この積極的逃避というべき姿勢は、生きづらさを感じて生きる現代の人々に何らかの示唆を与える、普遍性があるものだと思います。
★★★☆☆(2016年9月14日(水)DVD鑑賞)
クロエちゃんになら血を吸われてもいいと思っているダメ人間は手を挙げてぇ!
