【映画評】実録・私設銀座警察 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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戦後の混乱の中で復興の著しい銀座を舞台に、自然発生的に生まれた暴力団の興亡を描く(映画.comより引用)。1973年公開作品。監督は佐藤純彌で、出演は安藤昇、渡瀬恒彦、藤浩子、中村英子、郷鍈治、室田日出男、近藤宏、内田朝雄、葉山良二、待田京介、梅宮辰夫。
 
東映実録路線を切り開いた、『仁義なき戦い』公開の半年後に本作が公開された事実に、当時の東映のフットワークの良さを感じます。元安藤組組長の安藤昇が主演で、梅宮辰夫がスケコマシやくざ役という、あまりにもハマり過ぎなキャスティングも東映のイケイケ度の表れです(安藤昇インタビューは過去記事「東スポらしい戦後70年インタビュー(安藤昇)」で。そして辰兄ィ頑張れ!)。
 
佐藤純彌監督なので、やり過ぎな演出が目立ちます。いちいちオーバーアクション気味ですが、力技でグイグイと観客を引き込みます。注目すべきは、内田朝雄が演じる中国人ブローカーへの凄惨極まりない私刑です。そこそこ年配者なのに若造のやくざにボコボコにされ、自白強要目的で片手を高温の天ぷら油でカラッと揚げられます。挙句の果て、殺された後は豚小屋に放り込まれ、腹ペコの豚に食いちぎられて餌にされてしまいます。実話なのかもしれませんが、やり過ぎです。
 
形式上の主演は安藤ですが、実質的な主役は、復員兵の殺人マシーン、渡会役の渡瀬恒彦です。戦地から帰ると、妻が米兵相手のパンパン(娼婦)に堕ち、肌の黒い赤ん坊までいるのを目撃し、逆上した渡会は、赤ん坊を二階から投げ捨て、妻を撲殺します。絶望の果て、闇市を彷徨う渡会は通りすがりの米兵を傷害し、逃亡しているところを暴力団に匿われます。暴力団は渡会をヒロポン(覚醒剤)中毒にし、命知らずの鉄砲玉として利用します。終盤、警察による大規模なガサ入れ(捜索)を前に酒池肉林の狂宴に耽るやくざ達を尻目に、渡会は虚ろな目で血反吐まみれになって絶命します。本作は渡瀬で始まり、渡瀬で終わっているのです。
 
そして、戦後復興期における暴力団の金と暴力を描く“裏・戦後日本史”と言える本作において、渡会の存在は戦争を象徴しています。敗戦により価値観が崩壊し、モラルなき欲望のまま暴走する戦後日本において、忘れ去られて消えそうになっている亡霊のような戦争というものを、渡会の生き様に託し、観客の記憶に刻みつけようとしているのです。
 
★★★★☆(2016年8月29日(月)DVD鑑賞)
 
ちょいちょい映る子分役のたこ八郎が気になってしまいました。
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