
児童心理学者のカーターは子育てをしながら、子供の心理を観察し続けていた。しかしその行動は次第に常軌を逸していく。そんなカーターを手助けする、双子の兄弟ケイン。一方、町では子供が行方不明になるという事件が起きていた。やがてカーターとケイン、そして彼らの父親にまつわる過去が明らかになっていくが……(映画.comより引用)。1992年日本公開作品。監督はブライアン・デ・パルマで、出演はジョン・リスゴー、ロリータ・ダヴィドヴィッチ、スティーヴン・バウアー、フランシス・スターンハーゲン。
多重人格者を扱ったサスペンスという点は、デ・パルマ監督の『殺しのドレス』と、その源流であるアルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』と同じです。ヒッチコックを敬愛するデ・パルマは、自動車を水没させるネタまで『サイコ』から拝借しています。
デ・パルマお得意のスローモーションや長回しで、サスペンスを煽る演出をしています。それにより確かにドキドキできますが、あまりにやりすぎで肝心のストーリー展開が雑になっているような印象を受けます。
勝手な想像ですが、デ・パルマが張り切りすぎたのでしょう。本作の前に『虚栄のかがり火』が大コケしてしまったので、「俺にはサスペンスしかない!」と原点回帰を決意したデ・パルマが、これでもかとばかりに自分のできるサスペンス演出を、ストーリーを無視してまでもブチ込みまくったのが本作だと思ってしまいます。
あそこまでやられると、もはやサスペンスコメディの域に達しています。実は観客の意外性を突くという点で、サスペンス演出とコメディ演出は紙一重のところがあります。女性アイドルを追いかける殺人鬼が、実は変なおじさんというオチになる志村けんのコントは、そこを理解しているのです。
正統派のサスペンスとして真面目に鑑賞すると、粗が目に付く本作でも、サスペンスコメディとして観れば、ツッコミを入れながら楽しむことができそうです。
★★☆☆☆(2016年8月2日(火)DVD鑑賞)
『ミッドナイトクロス』程度なら良かったのですけどねえ。