
性と暴力の中に人間の本能を求める現代男女学生の生態を描いた異色作(映画.comより引用)。1954年公開作品。監督は市川崑で、出演は川口浩、川崎敬三、若尾文子、宮口精二、岸輝子。
石原慎太郎の小説を映画化した、いわゆる太陽族映画です。同年には『太陽の季節』も公開されています。実は本作の主演にデビュー前の石原裕次郎の起用が検討されていたというエピソードがあります。結局本作の主演は川口浩に決まり、裕次郎は『太陽の季節』で映画デビューすることになります。もし本作で裕次郎がデビューしていれば、大映所属俳優になっていたはずで、日活スターとしての裕次郎はいなかったでしょう。日本映画史が大きく変わったであろう“if”です。
本作が初主演作となる川口も、共演の若尾文子も初々しいです。後に川口が探検隊を率いて秘境へ赴くとか、若尾が白い犬を息子に持つとか想像ができません。
原作小説は主人公への私刑(リンチ)を生々しく描写することがメインで、そのまま忠実に映画化すれば、かなり尺が短い作品になります。そのため、長編(90分前後)になるように原作にない要素を盛り込んでいますが、結果的に原作の衝撃度を薄めています。
また、本作は市川崑監督の大映移籍第1作で、現場で不慣れな点が多かったと思われます。主人公(川口)と父親(宮口精二)が真面目に話している隣の部屋で、母親(岸輝子)が新聞の4コマ漫画を読んで笑っているという、和田夏十脚本らしいクールな描写もありますが、まだ市川監督の実力が全て発揮されていないという印象を受けました。
★★☆☆☆(2016年8月1日(月)DVD鑑賞)
「厚化粧の大年増」(©慎太郎)も本作を観たことがあるのでしょうか。