【映画評】モンスター | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

イメージ 1
 
86年のフロリダを舞台に、アメリカ史上初の女性連続殺人犯となったアイリーン・ウォーノスの実話を映画化。貧しい家庭で虐待されて育ち、娼婦をして暮らすアイリーンは、同性愛の少女セルビーと出会い、彼女との生活費を稼ぐために殺人を重ねていく(映画.comより引用)。2004年日本公開作品。監督はパティ・ジェンキンスで、出演はシャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ、ブルース・ダーン。
 
アイリーンの事件は、『テルマ&ルイーズ』の元ネタでもあります。しかし、同作には、女同士の犯罪逃避行という部分以外に大幅な脚色が加えられていました。それに対し、本作はかなり事実に近く、アイリーンの同性愛にまで踏み込んでいます
 
製作も兼ねるシャーリーズ・セロンは、アイリーン本人に似せるため、体重を13kgも増やし、ブスメイクまで施すという真剣な役作りをしています。日本の美人女優の体当たり演技など、生温く思えてきます。後の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観ると、セロンは凝った役作りをするのが好きな人のようです。
 
セルビー役のクリスティーナ・リッチは、脱子役イメージを図るかのように、攻めた演技をしています。それでも、子役時代から培った(「愛しぶり」ではなく)愛されぶりを、セルビーのキャラクターに活かしているのは巧妙です。
 
アイリーンの人格形成に父親が大きく関わっている点は、日本の実録犯罪物『復讐するは我にあり』に通じるものがあります。アイリーンの根幹にある男(社会)への嫌悪と、『復讐するは我にあり』の榎津巌が父親への復讐として犯罪に走る心理は、似ているからです。
 
タイトルにある「モンスター」とは誰のことでしょうか。アイリーンは連続殺人鬼ですが、本作を観た後では、憐憫の情が生じ、モンスター扱いできなくなります。それでは、アイリーンを狂わせながら、結果的にアイリーンを見捨てたセルビーでしょうか。それとも、アイリーンの性格や人生を歪ませた男たちでしょうか。
 
本作は観る者の価値観や正義を揺さぶる映画です。
 
★★★★☆(2016年7月25日(月)DVD鑑賞)
 
現代日本で似た事件が起これば、SNSでアイリーンの素性は晒され、容赦なく断罪されるでしょう。
イベントバナー

 

にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)