
第10回ぴあフィルムフェスティバルグランプリ受賞作(映画.comより引用)。1986年製作で劇場未公開作品。監督・主演は園子温。
園監督の初期作品で、二部構成になっています。第一部『丸ごと一匹野郎』では、園本人が主人公で、何者かに追いかけられたり、カッパに襲われたりします。園は全裸に赤いコート一枚という変質者チックな装いで走り回ります。いきなりカメラ前で脱糞もします。若気の至りとは言え、かなり怖いものなしです。映像は荒いですが、ライブ感に満ちています。
第二部『斜線』では、第一部の荒々しさは何処へ行ったのかと思うほど、園が家出しようとする青年の悶々とした日々を演じています。園の家族も出演しており、園のプライベートな部分を表出させていると言えます。園は家出する時、柱時計を持っていこうといます。「家出」に「柱時計」だと、寺山修司の映画みたいな感じがします。
第一部の「動」と第二部の「静」は、どちらも園の本質であり、本作は『愛のむきだし』ならぬ「園のむきだし」になっています。現在に至る作品群は、その「動」と「静」のバランスによって成立しており、『冷たい熱帯魚』や『地獄でなぜ悪い』のように「動」が勝る作品があれば、『気球クラブ、その後』や『ちゃんと伝える』のように「静」を貫く作品もあります。
そのように現在の園監督作品の萌芽を発見できる本作ですが、所詮荒削りなので、映画館で金を払って鑑賞するには厳しいものがあります。
★☆☆☆☆(2016年7月9日(土)インターネット配信動画で鑑賞)
叫ぶ、脱ぐ、暴れる。江頭2:50みたいな芸風の園子温です。