
若いサラリーマン夫婦が一軒家を建てた借金返済のため、二階を他人に貸したことから起こる騒動を描く喜劇。1961年公開作品。監督は山田洋次で、出演は小坂一也、葵京子、平尾昌章(昌晃)、瞳麗子。
山田洋次監督のデビュー作にして、彼の永遠のテーマである「家族」が描かれています。小坂一也と平尾昌晃が出演しており、歌手が芝居をするという点で、後の沢田研二や福山雅治の先駆けという言い方もできます。
上映時間が1時間もないので、物語はテンポ良く進んでいきます。時代のせいなのか、山田監督の若気の至りか分かりませんけど、笑いの取り方に毒気があるような気がします。上京してきた主人公の母親(高橋とよ)は、すき焼きの肉を一度口に入れた後、生煮えであることを指摘されると、口から出した肉を再び鍋の中に投入します。ひどく生理的嫌悪感を抱かせるシーンです。振り返ると、主人公の兄(穂積隆信)は自分でねぶった箸で鍋の具を入れていました。これも汚いです。これほど嫌悪感を抱かせる存在なのに、関係を断ち切ることができないという点に、山田監督の家族観が反映されています(『男はつらいよ』の車寅次郎は、周囲に迷惑をかけますが、家族は彼を見捨てることはしません)。
下宿夫婦や母親に悩まされながらも、主人公夫婦は前向きに生きようと希望を持ち直します。それが雪降るクリスマス(の後日?)であることから、実は本作が『素晴らしき哉、人生!』と同じクリスマス映画だと分かるのです(本作の公開は1961年12月でした)。山田監督のデビュー作がクリスマス映画というのは、意外な印象を受けました。
★★★☆☆(2016年4月30日(土)DVD鑑賞)
ちょっとサスペンスじみた展開になるところは、清張作品で有名な野村芳太郎が脚本だから?