
200万ポンドにのぼるダイヤモンドが密輸され、しかもそれが闇市場にも出回っていない。もし何らかの意図で貯めこまれるとすれば、ダイヤモンド産業は一挙に危機にさらされてしまう、とダイヤモンド協会が恐れている。イギリス秘密情報部の上官Mは007号ジェームズ・ボンドにこう前置きし、現在計画されているダイヤ密輸の運び屋に変装し、アメリカ密輸シンジケートに潜入せよと命じた(映画.comより引用)。1971年日本公開作品。監督はガイ・ハミルトンで、出演はショーン・コネリー、ジル・セント・ジョン、チャールズ・グレイ、ラナ・ウッド、ジミー・ディーン、ブルース・キャボット。
宝石会社のキャッチコピーみたいなタイトルですが、『007』シリーズの第7作です。『007は二度死ぬ』でジェームズ・ボンド役を卒業したはずのショーン・コネリーがカムバックしましたが、本作で再び卒業しました。
コネリーのボンド像がハマりすぎたため、ジョージ・レイゼンビー主演の『女王陛下の007』が不評で、そのためにカムバックしたそうです。今となっては、不評だった『女王陛下の007』を再評価する向きもありますが(ダニエル・クレイグ主演の『007 カジノ・ロワイヤル』でボンドが恋人ヴェスパーを失うのは、『女王陛下の007』に似ています)。
スティーヴン・スピルバーグは、『007』の監督を申し出たのに断られたため、スピルバーグ流の『007』である『インディ・ジョーンズ』シリーズを作ったという話があります。そしてシリーズ第3作『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』で、インディの父親役として登場するのは、コネリーです。すなわち『インディ・ジョーンズ』シリーズは『007』シリーズの子であるという、スピルバーグの思いを反映したキャスティングなのです。ここでも、ボンド=コネリーというハマリ度の高さが証明されています。
そのハマリ度の高さは、もはやコネリー本人も呪縛し、コネリーが何の役を演じてもボンドの影がちらつくというマイナス面も生じています。藤岡弘、が仮面ライダー1号=本郷猛に呪縛されているのと同じです。
さて本作の内容について言及すると、ボンドは宿敵ブロフェルド(チャールズ・グレイ)と対決するのですが、『オースティン・パワーズ』のドクター・イーブルを見ているので、どうしても可笑しくなってしまいます。ラスベガスでの大掛かりなロケもあり、スケールの大きな作品です。しかし、どこかコミカルなアクションシーンは、リアリズム重視の現代アクション映画に比べ、荒唐無稽で雑に見えることもあります。それでも、『007』らしさとして捨てがたい独特の持ち味がある作品なのです。
★★★☆☆(2016年4月8日(金)DVD鑑賞)
コネリーがボンドを演じている時はヅラ着用だったそうです。