
会社では風采が上がらず、家でもダメオヤジの男がある日突然変身、メチャクチャ暴れるピンクコメディ(映画.comより引用)。1979年公開の日活ロマンポルノ作品。監督は小沼勝で、出演は柄本明、高田純次、ベンガル、綾田俊樹、朝霧友香、橘雪子、小川亜佐美。
ポルノ映画ですが、凄い才能が集まっています。『リング』の中田秀夫が師匠と呼ぶ小沼監督、『遠雷』や『ヴァイブレータ』の脚本家荒井晴彦、『マルサの女』など伊丹十三作品のカメラマン前田米造。そして柄本ら劇団東京乾電池の面々です。後の日本映画界に与えた影響が少なくない顔ぶれです。
東京乾電池のメンバーがハイテンションなコメディ演技を見せます。現在の柄本は、多くの映画でシリアスな役どころを演じていますが、志村けんとのコントで見せるようなコミカルな芝居もできる人です。終盤、褌一丁で偽ジレンマン(ベンガル)と対決しますが、後に『許されざる者』で褌一丁のまま死んでいく様を演じています。三十年以上経っても変わらぬ、柄本のお家芸と言えます。
現在では”テキトー男”として知られる高田が、役者としての顔を見せています。そうは言っても、セクハラ専務の役なので、今とほとんど変わりません。女子社員の汗ばんだ尻を舐め、その塩気で西瓜を美味しそうに食べるというド直球のセクハラ演技をかましてくれます。眼球を高速で動かす芸も披露します。これまた三十年以上経っても変わらぬ、芸風のブレの無さは尊敬に値します。
元はメジャー映画会社であった日活の製作なので、ピンク映画やアダルトビデオと違い、大掛かりな野外ロケも行える強みがあります。ちなみに作品中に登場する大きな庭園は、日活撮影所がある調布市の神代植物公園だそうです(以前、高田がテレビ番組で語っていました)。
本作には、『スーパーマン』や『バットマン』などのアメコミヒーロー物に通じるストーリー性があります。仮面を被ると超人的能力を発揮するのは『マスク』のようでもあり、下ネタ盛りだくさんの内容は『HK 変態仮面』のようでもあります。
更に深読みして、ダメオヤジの主人公(柄本)がジレンマンに変身してからの展開を、彼の夢や妄想だと解釈すれば、『マトリックス』や『ファイト・クラブ』に共通するものがあります。本作はコメディの体裁を装っていますが、実は核心がしっかりとした作品ではないかと思うのです。
★★★☆☆(2016年3月28日(月)DVD鑑賞)
本作のギャグアドバイザーに岩松了の名前がありました。