【映画評】ヌードの夜 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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恋人のヤクザを殺した女とその女に惚れたがゆえに殺人事件に巻き込まれていく男の不思議な関係を描く(映画.comより引用)。1993年公開作品。監督は石井隆で、出演は竹中直人、余貴美子、椎名桔平、根津甚八、岩松了、田口トモロヲ、室田日出男。
 
石井監督永遠のテーマである、雨降る街での「名美と村木」の物語です。
 
余貴美子が悲しい運命の女、名美役を演じます。今や熟女優ではトップクラスの余ですが、本作では撮影当時30代後半の色気を見せてくれます(ロバート秋山ら熟女好き芸人の定義によれば、40代前半までは熟女ではないそうです)。
 
竹中直人がボロボロになりながらも名美に献身する男、村木役を演じます。竹中がアドリブギャグ無しで演技をして、『痴漢電車 下着検札』の時と同一人物とは思えない格好良さを見せてくれます(それでも最後にネタをやったのは、竹中が我慢できなかったのか、石井監督からのご褒美なのか)。
 
名美と村木は、他の石井作品にも“転生”します。そして、本作の登場人物も石井監督の『GONIN』に“転生”しているようです。椎名桔平が演じた元ボクサーの子分は、『GONIN』でパンチドランカーのチンピラに、岩松了が演じた借金漬けのサラリーマンは、『GONIN』で竹中が演じたリストラされたサラリーマンに、田口トモロヲが演じたゲイは、『GONIN』で本木雅弘が演じたゲイボーイに、キャラクター(の一部)が似ているからです。
 
リアルな物語かと思わせながら、不意にジャンルを越境するような演出があります。名美がヤクザ(根津甚八)を殺害するシーンは、血まみれスプラッターになります。また村木が見る悪夢のシーンは、デヴィッド・クローネンバーグの映画のようなグロテスク感があります。そして終盤のオチが、まさかの怪談調になるという意外性を見せます。
 
このオチは、使い方を誤ると作品を台無しにするものです。しかし本作の場合、むしろ名美と村木のプラトニックな悲恋を際立たせるという、優れた効果を生んでいるのです。
 
★★★★☆(2016年3月7日(月)DVD鑑賞)
 
本作の「バブル時代への恨み節」という要素も『GONIN』に引き継がれています。
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