
内戦下のスペインを舞台に、人里はなれた孤児院に連れてこられた少年が体験する恐怖を、ノスタルジックに描く(映画.comより引用)。2004年日本公開作品。監督はギレルモ・デル・トロで、出演はマリサ・パレデス、エドゥアルド・ノリエガ、フェデリコ・ルッピ、イレーネ・ヴィセド、フェルナンド・ティエルヴ。
スペイン内戦(1936年~1939年)下を生きる少年カルロス(ティエルヴ)が主人公という点で、スペイン内戦後を生きる少女が主人公である、デル・トロ監督の傑作ダーク・ファンタジー『パンズ・ラビリンス』に連なるものがあります。『パンズ・ラビリンス』の方が、残酷さと美しさの両面で本作を上回っているような気がしますけど。
少年の幽霊が出てきますが、即物的なショッキング描写に頼らず、ジワジワと忍び寄るような、いわゆるJホラーに近い恐怖描写になっています。死後、水槽に沈められた少年の幽霊なので、水死体のような外見で登場します。幽霊と水との親和性は、万国共通なのでしょうか(日本の古典的な幽霊は、川辺の柳の下や古井戸に現れます。『リング』の貞子も古井戸の中から這い出てきます)。
本作の幽霊は、カルロスに危害を加えるのではなく、無念を訴えるために出現します。ただ外見が不気味なので、カルロスは事情を理解するまでビビリまくります。見かけと違って怖くないという点は、水木しげるが『ゲゲゲの鬼太郎』などの漫画で描いた妖怪像と似ています。日本のアニメや特撮映画を愛好するデル・トロ監督なので、感覚が共通しているのかもしれません。『ヘルボーイ』を観ると、『ゲゲゲの鬼太郎』に近いものがありますから。
孤児院の新入りとなったカルロス(ティエルヴ)がイジメの洗礼を受けることで、子供社会が清廉ではないことを描いています。しかし、次第に管理人のハチント(ノリエガ)ら大人達の汚さが浮かび上がるように展開していきます。大人社会の方が愚劣で汚いに決まっています。そもそも諸悪の根源である戦争を始めたのは、大人達ですから。
この転換がストーリー全体の軸になっています。それは幽霊となった少年を殺したのは誰か?という謎解き(ミステリー)であり、実は冒頭のシーンが観客に先入観を植え付けるフェイントになっているのです。デル・トロ監督の巧みなドラマ作りに感心しました。
★★★☆☆(2016年1月29日(金)DVD鑑賞)
ギレルモ・デル・トロ監督の『パシフィック・リム』はアニメや特撮のファンなら必見です。