
父から教えられた“天国にいちばん近い島”を探しに出かけた少女が、その島を見つけ、成長してもどってくるまでを描く(映画.comより引用)。1984年公開作品。監督は大林宣彦で、出演は原田知世、高柳良一、赤座美代子、峰岸徹、泉谷しげる、高橋幸宏、小林稔侍、室田日出男、乙羽信子。
名作『時をかける少女』のスタッフが再結集し、原田知世という少女の魅力を美しく撮った作品です。主題歌も原田で、後に歌手として評価される才能の片鱗を聴かせてくれます。
原田が演じる少女は、地味で無口でドジなメガネっ娘という、少女萌えの要素てんこ盛りな設定になっています。ロリコン趣味の大家、大林監督のスキルを全開させた仕上がりです。
原田を美しく撮るための作品なので、他の出演者は添え物になります。大林作品常連組(高柳、峰岸)も、ミュージシャン組(泉谷、高橋)も、東映大部屋組(小林、室田)も、ベテラン女優の乙羽も原田を輝かせるための存在です。本作は一種のアイドルイメージビデオです。
しかし、『時をかける少女』に比べ、本作は大林監督の実力が生かされているとは言い難いものがあります。それはニューカレドニアの自然な風景が原因ではないでしょうか。当時の大林作品は臭くてキザな台詞、漫画みたいにデフォルメされたキャラクター、嘘みたいに強引な展開が特徴的です。これらは、監督のイメージどおりに「加工」された画面でこそ違和感なく伝わります。『HOUSE』や『ねらわれた学園』あたりが、その成功例です。作り物の世界で絵空事をやっても、世界観が統一されているので、支障がないということです(近年の大林作品はファンタジックではない現代劇が多いですが、善人ばかりの理想郷的な世界観は、殺伐とした現実に比べると、十分にファンタジーであるとも言えます)。
そうなると、作品の都合上、ニューカレドニアの美しい自然を背景としなければならず、大林監督のイメージどおりに「加工」が行き届いていない画面にならざるを得ない本作は、大林作品の特徴が浮いてしまうという結果になります。『時をかける少女』など尾道を舞台とする一連の作品と違い、勝手が違うアウェイ感もあったでしょう。無理に観光名所を撮らなければならなかったりとか。その結果、本作は原田のアイドルイメージビデオの要素に、ニューカレドニアの観光PRビデオの要素も加味され、どうにも安っぽい作品になっている印象を拭えないのです。
★★☆☆☆(2016年1月9日(土)DVD鑑賞)
「メガネっ娘がメガネを外すと美少女」という二度おいしい展開は、現実には皆無に等しいです。