
長距離トラックの運転手が、全米各地の荒くれ男たちを相手に捲きおこすケンカと、恋を猫く(映画.comより引用)。1978年日本公開作品。監督はジェームズ・ファーゴで、出演はクリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック、ジェフリー・ルイス、ビヴァリー・ダンジェロ、ルース・ゴードン、ウォルター・バーンズ。
原題は“Every Which way but loose”ですから、邦題は同じイーストウッド主演の『ダーティハリー』にあやかって、日本の配給会社が名付けたものと思われます。このことから、本作は重苦しくなく、軽めの娯楽作品だと分かります。
確かに菅原文太主演の『トラック野郎』にも似たB級映画的感覚があります。そうなると、本作の主人公の相棒は、オランウータンなので、“やもめのジョナサン”愛川欽也と類人猿が同格という面白いことになります。
そのオランウータンがお利口さんで、名演技を見せてくれます。かつてフジテレビの深夜番組『CHIMPAN NEWS CHANNEL(チンパン ニュース チャンネル)』で活躍した、チンパンジーのゴメス・チェンバリンを思い出します。もっと言えば、ファッションモデルの片手間でやっている自称俳優の大根芝居より、オランウータンの方がずっと上手です。
喧嘩とビールが好きな荒くれ男は、アメリカ人にとって憧れの対象なのでしょう。かつてアメリカのプロレス団体WWF(現:WWE)でトップスターだった、“ストーン・コールド”スティーヴ・オースティンも同じキャラクターでしたから。そのキャラクターをイーストウッドが実に身に付いた感じで演じています。
監督作も含めて、イーストウッド出演作品には、イーストウッド個人の歴史が反映されています。『ダーティハリー』や本作の頃は、不器用なマッチョを演じていますが、『許されざる者』の頃から、人生の年輪を感じさせる老人を演じるようになります。役者本人の生き様と、演じる役が重なっているというのは、イーストウッドと高倉健くらいのものだと思うのです。
★★★☆☆(2015年11月9日(月)DVD鑑賞)
「俺の嫁さん良いだろ!」とばかりにソンドラ・ロックを出演させるのも、男らしいと言えます。