【映画評】華麗なる追跡 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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冤罪を着せられ死去した父の仇を討つために巨大な組織に敢然と挑戦する娘を描いたアクション映画(映画.comより引用)。1975年公開作品。監督は鈴木則文で、出演は志穂美悦子、マッハ文朱、田中久子、天津敏、石橋雅史、由利徹、安岡力也、郷鍈治。
 
飛び蹴りを綺麗に決め、東映特撮でお馴染みの採石場で爆破の中を駆け抜け、高所アクションもこなす志穂美(現・長渕剛の嫁)。CMで瓦割りを見せる“ハイキック・ガール”武田梨奈が目標とすべき伝説のアクション女優です。
 
敵地に潜入するため、志穂美は変装で七変化を見せます。男装、老婆、修道女などです(修道女姿は『二代目はクリスチャン』でも披露します)。これは東映の大御所俳優、片岡千恵蔵が主演を務めた多羅尾伴内シリーズ』の意図的な焼き直しです。クライマックスの「ある時は…」の台詞まで同じですから。鈴木監督は後に小林旭主演で同作(『多羅尾伴内』)を手がけます。
 
当時人気女子プロレスラーだったマッハと、志穂美は「異種格闘技戦」の後、意気投合して共闘するという、ベタな展開を迎えます。本作での女子プロレス描写は、キャバレーでのドサ回りというゲスなものです。東映映画でのプロレスの扱いなんて、いつも雑なものですけど。
 
トラック野郎』シリーズなど、数多くの東映娯楽作品を世に送り出してきた鈴木監督だけに、荒唐無稽な展開やコミカルなアクションシーンがあり、いかにもB級映画です。しかし、かつてアメリカ映画の検閲制度であったヘイズ・コードで禁止された、暴力描写、性描写、宗教冒涜のタブー破りに挑んでおり、また黒幕が悪徳政治家であり、主人公が日の丸をバックにし、国会議事堂を憎悪の目で眺めるシーンに反体制・反権力的態度を見ることができます。『徳川セックス禁止令 色情大名』で権力者が個人の性を禁圧することの愚劣さを描いた鈴木監督は、批判精神溢れる戯作者であり続けたのです。
 
★★★☆☆(2015年10月26日(月)DVD鑑賞)
 
菊池桃子のデビュー作『パンツの穴』も鈴木則文監督です。
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