
北軍の軍資金を襲った強盗団が、仲間割れを起こす。生き残った主人公は、復讐のために、強盗団のボスを追う。マカロニ・ウェスタン(Yahoo!映画より引用)。1967年日本公開作品。監督はジュリオ・クエスティで、出演はトーマス・ミリアン、ロベルト・カマルディエル、ミロ・ケサダ、ピエロ・ルッリ、レイモンド・ラヴロック。
流れ者の主人公ジャンゴが訪れた町で、組織間の対立が生じるということ以外、『続・荒野の用心棒』と繋がりはありません。「ジャンゴ流行ってる? じゃあ、パクっちゃえ!」というラテン的興行センスの仕業でしょうか。
更に言えば、題名と異なり、ジャンゴは「情無用」というほど冷酷非道ではありません。殺人を犯した後、血の穢れを落とそうと丁寧に手洗いをする繊細な男です。町の組織間の争いを誘発させるほどの策士でもありません。組織間の対立は勝手に起こり、ジャンゴはその状況に流されます。結果的に組織はジャンゴが手を下さずとも自滅するので、勧善懲悪的なカタルシスはありません。
情無用なのは作品中の残虐描写です。強盗団を縛り首にし、ダイナマイトで馬を爆死させ、原住民の頭の皮をナイフで剥ぎ、悪党をドロドロに溶けた金を被って焼死させるという残虐描写があります。特に凄いのは、ジャンゴとの銃撃戦で瀕死状態になった、強盗団のボスの体内に純金製の弾丸が埋まっていると知ると、欲に目がくらんだ町民たちが寄ってたかって傷口に手を突っ込み、ボスを死なせてしまうシーンです。もはやゾンビ映画の域に達しています。
これだけの残虐描写がありながら、ドキュメンタリー出身のクエスティ監督が撮っているため、ショッキングに煽ることはなく、サラリとした残虐描写になっています。ジャンゴのキャラクターと相まって、不思議なアッサリ感が残ります。
あと気になったのは、対立する組織の人質に取られた少年の扱いです。この組織のメンバーは、統一された制服を着た男だらけの集団です。彼らは酒宴で囚われの少年を狙うように眺め、やがて酔って少年の体を撫で回します。翌朝、何か絶望感に満ちた少年は自殺します。演出上、描かれてはいませんが、おそらく少年は男たちに輪姦されたということでしょう。統一された制服を着た男集団は、ムッソリーニが創設した黒シャツ隊を連想させます。後にピエル・パオロ・パゾリーニが『ソドムの市』で示した「ファシストは変態野郎」という思想が、同じイタリア人が作った本作にも見られるという意外な発見です。
★★★☆☆(2015年9月19日(土)DVD鑑賞)
ジャンゴの名前は、ギタリストのジャンゴ・ラインハルトが由来(諸説あり)。