ジャミラよ | 圭一ブログ

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圭一のブログです。1984年宮崎県生まれ

一発ギャグには、苦い思い出がある。

本来それは場を和ませる余興として、

また見知らぬ人とのコミュニケーションとして有効な手段となるはずだ。

私はある信念に基いて、「ジャミラ」を言わば持ちネタとしている。


しかしこれが、一向に受け入れられためしがない。


ジャミラとは、ウルトラマン第23話「故郷は地球」に登場する怪獣である。

しかしその正体は、某国が打ち上げたロケットに乗っていた宇宙飛行士であり

正真正銘の地球人であった。

事故によって水のない惑星に墜落し、救助を待つうちに体が変異し、

醜い怪獣の姿となってしまった。


ジャミラ(手書き)

↑こんな感じ(体長50メートル)


母国が国際批判を恐れて事実を隠蔽したために見捨てられたことを恨み、

地球に帰ってきて国際平和会議の会場に出現した。

武器は口から吐く火炎(100万度)。

水のない星に長くいたせいか皮膚が粘土質に変化しており、

皮肉にもずっと欲していた水が最大の弱点となってしまった。


ウルトラマンのウルトラ水流によって絶命する。

前のめりに倒れて這い蹲って万国旗を潰し、その断末魔は

赤ん坊の泣き声に似た悲痛なものであった。


私はこの哀れな怪獣(地球人なのに怪獣!)の持つ物語は

我々人類にとって大いなる警鐘であると思っている。


この物語は、1957年から始まった宇宙開発競争を背景としている。

宇宙開発とは、地球が持続可能ではなくなりつつあったということによる

一つのムーブメントではなかろうか。

ものすごい手間をかけて、わざわざ宇宙に行くなんて・・・

戦争が一番の環境破壊だというけれど、つぎ込まれる膨大な資源や

エネルギーは、宇宙開発も似たようなものである。

結果、醜い怪獣となってしまった宇宙飛行士。

地球人の自分勝手な過ちが、彼を怪獣としてしまったのではないか。


水は、人間はもちろんあらゆる生物にとって必要なものである。

また、しばしば恵みの象徴とされる。

ウルトラマンの腕からものすごい勢いで放出されるウルトラ水流なんて、

高度経済成長にあった日本の勢いそのものではないか。

アフリカの村がいくつ救えるんだというくらい、滑稽なまでに

もの凄い量が出るのである。


しかしジャミラにとってはそれが致命的なのだ。

国際平和会議の会場の、万国旗をなぎ倒し、

赤ん坊の悲鳴に似た断末魔を上げてジャミラは死ぬのである。


人類の幸福のためにそれが良いことだと思わされて、信じて裏切られて、

復讐のために戻ってきて、そんな自分がいたことを異形と

100万度の火炎放射でこれでもかと思い知らせて、

ものすごく欲しかったものをやっと与えられて、

でもそれで命が終わってしまって。

前のめりに倒れて、

最後に平和の象徴ってみんなが思っているものをぶち壊して。


そんなふうに、最後まで真実に誠実で無様でありたい。

だから私は凝りもせず、スーツの上着を頭にかぶってこう叫ぶのである。

「ジャミラ!」