H28 刑事訴訟法
第一 設問1
1 Pは甲の体を運転席まで押し戻し、甲の運転席に留め置いている。このようなPの措置が「停止」(警察官職務執行法(以下法という)2条1項)として適法か。Pは甲の体を押しており、このような有形力の行使が認められるか。
司法警察活動においても相当な限度で有形力の行使が認められていることから、捜査の端緒である職務質問やこれに伴う停止行為についても、①強制の方法によらないかぎり、②職務質問等の必要性、緊急性あり、③公益と相手方への権利侵害との権衡を考慮して社会通念上、具体的状況において相当と認められる場合には有形力の行使が認められる。
2 本件では、平成27年7月1日午前11時20分及び25分に、甲が甲車から歩き出した際、Pは甲の前に立ち塞がっており、この時、甲は警察に行くくらいならここにいるといっている。また、甲は弁護士に連絡し、帰ることができることを知っているにも関わらず、午後4時ころには、Pの「座っていなさい」という言葉に対し、「帰れねえのか」といいながら車の運転席に戻っている。このように甲の意思は制圧されているとは言えずPの措置は①強制の方法によったとはいえない。
甲はPらが駆け付けた際、エンジンの空ぶかしをしたり、目の焦点が合っていない状態であり、覚せい剤取締法違反の前科もあることから、覚せい剤所持及び使用罪の嫌疑が高く「何らかの犯罪を犯し・・ていると疑うに足りる相当の理由」(法2条1項)があるといえる。また、覚せい剤事犯は密行性が高く、証拠を確保する必要性が高い。甲は現場から逃走しようとしていることからPが甲を留め置く緊急性もある。したがって、Pの行為は②必要性緊急性がある。さらに、Pは甲に傷害を負わせるような態様で甲を留め置いたのではなく、停止の必要性と甲の法益との権衡を考慮しても相当な行為といえる。
3 よって、Pの措置は「停止」として適法である。
第二 設問2
1 検察官は公訴の提起前に限り、接見指定することができる(39条3項本文)。もっとも、被告人及び被疑者の弁護人依頼権は憲法34条前段が保障する重要な権利であることから、「捜査のため必要がある」(39条3項本文)とは被告人及び被疑者の身柄拘束を伴う取り調べの最中であるか、間近い時に取り調べを行う必要がある場合に限られる。
本件では、①の措置が行われた平成27年7月3日午前9時50分にSは甲を取り調べていた。そのため、①の措置は甲の身柄を拘束する取り調べの最中といえ、「捜査のため必要がある」にあたる。
②の措置が行われた同日10時25分、Sは甲の取り調べを終えているが、これから取り調べを行う予定であった。そのため、②の措置は間近い時に取り調べを行う必要がある場合といえ「捜査のため必要がある」にあたる。したがって、①の措置②の措置ともに接見指定することができる。
2 検察官が接見指定できるとしても、その内容が被疑者の防御権を不当に制約するものであってはならない(39条3項但書)。不当な制約かどうかは、接見の必要性と捜査の必要性を総合考慮して判断する。
本件では、①の措置について、甲はTと初回接見であり接見の必要性が高い。しかし、Sが指定した同日午前11時はH警察署とI地方検察庁が自動車で30分の距離にあること、弁解録取手続きが終了するまで30分を要することから、①の措置が行われた午前9時50分から1時間10分後としたものである。したがって、①の措置は合理的な時間が指定されたといえ、接見の内容として、「権利を不当に制限」したとはいえない。よって、①の措置は適法である。
②の措置については、甲とTの初回接見であるが、Sの弁解録取手続きが終わってから甲が自白しようか迷っていることをSは認識し、自白を得る機会であると考えている。そのため、甲を取り調べる必要が高い。また、接見指定の時間も午前11時から1時間半遅れたのみであり、T当日中に接見することができている。したがって、②の措置は不合理な接見指定とはいえず「権利を不当に制限」したとはいえない。
3 よって、①の措置、②の措置共に適法である。
第三 設問3
1 本件争点は乙が甲に覚せい剤を譲り渡したか、その際乙に覚せい剤であるとの認識があったかである。そのためSは③の証言によって、乙が禁制品を甲に渡したことを立証し、乙が甲に覚せい剤を渡したことを推認させる。したがって、③の証言の要証事実は乙が禁制品を甲に渡したことである。
2 ここで、伝聞証拠は原則として証拠能力が否定される(320条1項)。その趣旨は供述証拠は知覚、記憶、表現、叙述の過程の誤りを反対尋問等によって吟味することができないことにある。そして、伝聞証拠か否かは要証事実との関係で相対的に判断される。
本件では、要証事実との関係で③証言の内容の真実性が問題となることから、③の証言は伝聞証拠といえる。
そのため③の証言の証拠能力が認められるには伝聞例外要件(321条以下)を満たす必要がある。甲は被告人でないから、乙の供述である③の供述は「被告人以外の・・供述で被告人の供述を・・内容とする」(324条)ものであるから322条が準用される。そして、③証言は乙にとって不利益であるから任意性が要求されるところ(322条1項本文、但書、319条)、乙は甲に心理的な強制をうけたような客観的事情がないことから任意性が認められる。したがって、③の証言は322条の要件を満たす。
3 よって、③の証言は証拠能力が認められる。
第四 設問4
1 裁判長は公判期日における訴訟指揮権を持つ(294条)。そして、295条は裁判長の訴訟指揮権の一環として、当事者の弁論を制限するものである。そのため、「相当でない」(295条1項)の判断は裁判長が公判手続きの状況等を考慮して、総合的に判断することができる。
本件では、乙は逮捕当時終日外出していたと供述しており、公判前整理手続きでは丙方にいたと供述し、さらに第二回公判期日では戊方にいたと供述が変遷していることから、平成27年6月28日の乙の居場所がどこであるかが判明していない。そこで、Uは④の質問をすることによって乙が本当に戊方いたかを立証しようとしている。Uの質問に乙が供述することによって、乙が戊方にいたことを立証することに役立つといえる。したがって、④の質問は公判手続きの状況等から合理的な訴訟活動といえ、「相当でない」とはいえない。
2 よって、裁判長は④の質問及びこれに対する乙の供述を295条1項によって制限することができない。 以上
第一 設問1
1 Pは甲の体を運転席まで押し戻し、甲の運転席に留め置いている。このようなPの措置が「停止」(警察官職務執行法(以下法という)2条1項)として適法か。Pは甲の体を押しており、このような有形力の行使が認められるか。
司法警察活動においても相当な限度で有形力の行使が認められていることから、捜査の端緒である職務質問やこれに伴う停止行為についても、①強制の方法によらないかぎり、②職務質問等の必要性、緊急性あり、③公益と相手方への権利侵害との権衡を考慮して社会通念上、具体的状況において相当と認められる場合には有形力の行使が認められる。
2 本件では、平成27年7月1日午前11時20分及び25分に、甲が甲車から歩き出した際、Pは甲の前に立ち塞がっており、この時、甲は警察に行くくらいならここにいるといっている。また、甲は弁護士に連絡し、帰ることができることを知っているにも関わらず、午後4時ころには、Pの「座っていなさい」という言葉に対し、「帰れねえのか」といいながら車の運転席に戻っている。このように甲の意思は制圧されているとは言えずPの措置は①強制の方法によったとはいえない。
甲はPらが駆け付けた際、エンジンの空ぶかしをしたり、目の焦点が合っていない状態であり、覚せい剤取締法違反の前科もあることから、覚せい剤所持及び使用罪の嫌疑が高く「何らかの犯罪を犯し・・ていると疑うに足りる相当の理由」(法2条1項)があるといえる。また、覚せい剤事犯は密行性が高く、証拠を確保する必要性が高い。甲は現場から逃走しようとしていることからPが甲を留め置く緊急性もある。したがって、Pの行為は②必要性緊急性がある。さらに、Pは甲に傷害を負わせるような態様で甲を留め置いたのではなく、停止の必要性と甲の法益との権衡を考慮しても相当な行為といえる。
3 よって、Pの措置は「停止」として適法である。
第二 設問2
1 検察官は公訴の提起前に限り、接見指定することができる(39条3項本文)。もっとも、被告人及び被疑者の弁護人依頼権は憲法34条前段が保障する重要な権利であることから、「捜査のため必要がある」(39条3項本文)とは被告人及び被疑者の身柄拘束を伴う取り調べの最中であるか、間近い時に取り調べを行う必要がある場合に限られる。
本件では、①の措置が行われた平成27年7月3日午前9時50分にSは甲を取り調べていた。そのため、①の措置は甲の身柄を拘束する取り調べの最中といえ、「捜査のため必要がある」にあたる。
②の措置が行われた同日10時25分、Sは甲の取り調べを終えているが、これから取り調べを行う予定であった。そのため、②の措置は間近い時に取り調べを行う必要がある場合といえ「捜査のため必要がある」にあたる。したがって、①の措置②の措置ともに接見指定することができる。
2 検察官が接見指定できるとしても、その内容が被疑者の防御権を不当に制約するものであってはならない(39条3項但書)。不当な制約かどうかは、接見の必要性と捜査の必要性を総合考慮して判断する。
本件では、①の措置について、甲はTと初回接見であり接見の必要性が高い。しかし、Sが指定した同日午前11時はH警察署とI地方検察庁が自動車で30分の距離にあること、弁解録取手続きが終了するまで30分を要することから、①の措置が行われた午前9時50分から1時間10分後としたものである。したがって、①の措置は合理的な時間が指定されたといえ、接見の内容として、「権利を不当に制限」したとはいえない。よって、①の措置は適法である。
②の措置については、甲とTの初回接見であるが、Sの弁解録取手続きが終わってから甲が自白しようか迷っていることをSは認識し、自白を得る機会であると考えている。そのため、甲を取り調べる必要が高い。また、接見指定の時間も午前11時から1時間半遅れたのみであり、T当日中に接見することができている。したがって、②の措置は不合理な接見指定とはいえず「権利を不当に制限」したとはいえない。
3 よって、①の措置、②の措置共に適法である。
第三 設問3
1 本件争点は乙が甲に覚せい剤を譲り渡したか、その際乙に覚せい剤であるとの認識があったかである。そのためSは③の証言によって、乙が禁制品を甲に渡したことを立証し、乙が甲に覚せい剤を渡したことを推認させる。したがって、③の証言の要証事実は乙が禁制品を甲に渡したことである。
2 ここで、伝聞証拠は原則として証拠能力が否定される(320条1項)。その趣旨は供述証拠は知覚、記憶、表現、叙述の過程の誤りを反対尋問等によって吟味することができないことにある。そして、伝聞証拠か否かは要証事実との関係で相対的に判断される。
本件では、要証事実との関係で③証言の内容の真実性が問題となることから、③の証言は伝聞証拠といえる。
そのため③の証言の証拠能力が認められるには伝聞例外要件(321条以下)を満たす必要がある。甲は被告人でないから、乙の供述である③の供述は「被告人以外の・・供述で被告人の供述を・・内容とする」(324条)ものであるから322条が準用される。そして、③証言は乙にとって不利益であるから任意性が要求されるところ(322条1項本文、但書、319条)、乙は甲に心理的な強制をうけたような客観的事情がないことから任意性が認められる。したがって、③の証言は322条の要件を満たす。
3 よって、③の証言は証拠能力が認められる。
第四 設問4
1 裁判長は公判期日における訴訟指揮権を持つ(294条)。そして、295条は裁判長の訴訟指揮権の一環として、当事者の弁論を制限するものである。そのため、「相当でない」(295条1項)の判断は裁判長が公判手続きの状況等を考慮して、総合的に判断することができる。
本件では、乙は逮捕当時終日外出していたと供述しており、公判前整理手続きでは丙方にいたと供述し、さらに第二回公判期日では戊方にいたと供述が変遷していることから、平成27年6月28日の乙の居場所がどこであるかが判明していない。そこで、Uは④の質問をすることによって乙が本当に戊方いたかを立証しようとしている。Uの質問に乙が供述することによって、乙が戊方にいたことを立証することに役立つといえる。したがって、④の質問は公判手続きの状況等から合理的な訴訟活動といえ、「相当でない」とはいえない。
2 よって、裁判長は④の質問及びこれに対する乙の供述を295条1項によって制限することができない。 以上