みなさんこんにちは。
前回より、いつものグッズ紹介とは嗜好を変えてコラム形式?にてブログを書いています。
今回はその2回目です。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
唐突ですが、「ニケの顔に181事件って実は海外版コミックスでも起こっていた!」と言われたら驚きませんか?今回はそんなお話を始めたいと思います。
なかなかの長文ですが最後までお付き合い頂けましたら嬉しいです。
まずはおさらいなのですが「ニケの顔に181事件」とは?というところから始めます。
以前グルグルグッズ紹介の第一回としてコミックスをご紹介しましたこちらのページに関連して書かせて頂いています。
要約すると『1巻の初版本の55ページの2コマ目のニケの顔の上に「181」の文字が!』というものです。ちなみに第2刷を直接確かめた訳ではありませんが恐らく初版本のみのはずです(実際に見ていないので検証中です。もし第2刷をお持ちの方おられましたらご一報ください)。
まずはじめに、こちら編集部のミスである事は明らかなのですが、そこを責めるような意味あいではなく、当時の全ての関係者様には先生と共にグルグルをこの世に産み出してくださった特段の感謝の念を持ちつつ、純粋に作業として何故この様な事が起きてくるのか、当事者ではないので推測の域を出ませんが、興味を持ちました。また、自分が今印刷の仕事をしている事も興味の一端にあります。
まずはじめに、白南風がこの「ニケの顔に181事件」をどうやって知ったかという所からはじめます。
白南風が衛藤先生の公認ファンクラブに入会したのは中学生の頃でした。ガンガンの柱に書いてあった「衛藤先生に励ましのおたよりを書こう」というのに手紙を送ったところ、ファンクラブの案内が来て入会という形でした。そこから会報「ヒロヒロ」を楽しみに過ごす日々が始まるのですが、バックナンバーを販売している案内がありました。そこでバックナンバーを注文するのですが、そこで注文したヒロヒロに「ニケの顔に181事件を思い出す...」という内容の一文があり(ヒロヒロの12号でした)ずっと意味が分からず、当時グルグルファン同士で文通や交流をしていた方に聞いて回ったりしたのですが、当時は誰からも情報が無く、分からないまま月日は流れました。大人になったある時、グルグルのコミックスの読み返し作業をしていて「!?」となりました。遂に見つけてしまいました。それでようやく謎が解けた訳です。(のちにヒロヒロの1号を入手し、衛藤先生が直々に1巻初版の181に意味は無いよ。とコメントしているコーナーがありました)
ちなみにこちらは魔法陣グルグルが連載開始された1992年8月号の181ページのノンブル(持っているガンガンの中で1番ニケの顔に181の時期に近い号)になります。
書体が同じですね。
自分が知っている情報は今までここまででした。
ここから掘り下げてみました。
まずは「どの段階で」181が付いたのかという問題です。まずは初期の段階からです。
参考にした資料の時期と手順が変わっていない前提ですが、まず、先生の仕事場でペン入れ、トーン貼りまでされた原稿はガンガン編集部へ持ち込まれます(ヒロヒロ20号「グルグルの出来るまで」参照)。編集部にて予め打ち出しておいたセリフやガンガンの柱の文字を貼り付けます(恐らくページノンブルもこの時に貼られると思われます)。最終チェックを終えたものは「完版」と呼ばれ、これが印刷所へ送られます(22号の「突撃!エニックスガンガン編集部 潜入レポート!!」参照)。
ここからは印刷所のお仕事になります。
印刷所ではアルミの版を焼いて印刷、印刷されたもの(刷本)を製本してようやくガンガンが誕生する訳ですが、この段階では181は付いていたのでしょうか?正解は「NO」です。もしこの時点で付き、ガンガンに181の付いたニケが掲載されていれば読者から確実に編集部に一報来ますし、コミックスになる前に直るはずだからです。しかし当時のこのガンガンのコマを見た訳ではないので言い切れませんでした。
という訳で軽い気持ちでこんなポストをしました。実はこの事がきっかけで更に真相は深まる事になります。
この件でフォロワーの、けう(@tiiaohana )さんよりご連絡頂きました!国会図書館に行く予定があるので、なんと見てきて下さるとのありがたいお話!(国会図書館とは日本で出版される全ての出版物が納められている国立図書館です)。
見て頂いたのは1992年11月号の151ページ、ニケの顔に181のついていた1巻第4章55ページに当たる部分です。(画像は諸事情で載せられませんが確認しました)ニケの顔に181はありませんでした。
また、181ページにもきちんとノンブルがあった(ハーメルンだった)との事です。
ここで、けうさんより驚きの一言を頂きます。
「11月号と一緒に閲覧申請していた、1992年10月号の181ページは魔法陣グルグル3話だったため、もしかしたらこちらのノンブルかも……?と言う感じです!」
な、なんという神がかり的な行動&考察!!
実は国会図書館の目録だと11月号なのか11月発売(12月号)か分からないので10月号と11月号を両方貸出依頼してくださっていたとの事!
これは自分が勢いで見に行っても気づかなかったと思います!!
実際にガンガンの該当ページ画像を確認させて頂きました!確かにニケのズボンが短剣の重みで落ちているあのコマの端に181のページノンブルが!しかもコミックスで言えばニケの顔に181のページからわずか4ページ前!
これらのことから推定される181のつくまでの流れはこうです。
編集部でガンガンに載せ終わった原稿をコミックスにするために、恐らく剥がれるノリで貼ってあったガンガンの柱やノンブルを取る作業中、4ページ前にあったこの181が例のコマのニケに付着して、気づかれないまま単行本になってしまった!
あくまでも推定ですが、長年の謎がこれで完全に解けた気持ちです。
いずれにしても打ち出してノリで貼るという、今では考えられないアナログな製作方法に、当時の苦労が伺えます。また、打ち出しの貼られた原稿を原画展でいくつか観ましたが、当時の熱量というか、これが生原稿なのかという感動がありました。当時苦労された担当の方には重ねて感謝の気持ちを表さずにいられません!
そして...こちらを基本情報としまして、海外版コミックスの181のお話なのですが、コラム①でもお世話になりました台湾のCopyRightさんとの「とある」検証のお話をさせて頂きます。実は本当の謎はこれからです(笑)。
こちらはCopyRightさんが最近手に入れられた台湾のガンガンである「GANGAN噹噹月刊」4号になります。か、可愛い過ぎる!とめちゃくちゃ欲しくなりました。お持ちの方おられるでしょうか?
サイズは日本のガンガンよりも小さいそうです。
そして次に送られてきた衝撃の画像がこちら!
疑問①
台湾版「魔法陣天使」は第2刷なのに181が直っていません!(後ほどCopyRightさんが初版を入手しました。そちらもそのままでした)。
日本の1巻の初版が1993年9月、台湾の初版が1995年2月(民国84年2月と表記あり)になります。これだけ期間が空いているのに直っていないのはなぜ?
疑問②
「GANGAN噹噹月刊」4号は1994年5月発売。台湾版ガンガンが直っているのに1995年2月発売のコミックスが直っていないのはなぜ?
更に
こちら「GANGAN噹噹月刊」4号です。
何か違和感感じませんか?
白南風は一瞬で違和感に気付きました。
こうするとわかりやすいと思います。
左:日本の1巻初版
中央: 「GANGAN噹噹月刊」4号
右:日本の1巻第6刷
耳の部分、顔の輪郭の線が不自然に切れているんです。しかも髪の毛の足りない部分が明らかに加筆されているんです。
日本での181の修正作業は恐らく、剥がれるノリで付いた181のノンブルをそっと原稿から剥がして取り込み直した(第6版の感じ)と想像するのですが、明らかに「GANGAN噹噹月刊」4号は最初の181のあったデータを修正しているように見えます。
【分かった事】
左: 「GANGAN噹噹月刊」4号
右: 台湾版「魔法陣天使」1巻(第2刷)
文字のフォントと内容が違う!
コミックスの翻訳と、「GANGAN噹噹月刊」4号の翻訳は、181の修正部分から見て元データは同じものを使用しているようですが、作業は別々に行われていたと見ていいと思います。
台湾で連載、コミックス化する際に当たり、日本と台湾でどのように原稿のデータをやりとりしていたのか、なぜ修正されていないデータを使っているのか、連載の時は気付けていた181がなぜコミックス側に伝わっていないのか(そもそも間に合わなかった?)謎が深まるばかりで真相は分かりません。また他の国ではどうなのかという興味もあります。何か情報をお持ちの方は白南風までご一報ください!
2024.4/18追記
台湾版以外の海外版のコミックスに「181」があるのか現時点で分かっている事をCopyRightさんが検証して下さいましたので追記させて頂きます。
まずは2006年に出版された「台湾産台湾/香港/(恐らく)マカオ向け」である青文コミックスの「咕嚕咕嚕魔法陣」や、2020年に出版されたベトナム版「Ma Pháp Trận Guru Guru」に181が付いていないという基本情報をご丁寧に頂きました。
こちら香港版「咕嚕咕嚕魔法陣」の再版4刷(97.7) です。
「181」ありました!
なんと台湾版だけでなく、香港版にも181が付いており、更に97年7月、再販4刷になっても直っていなかった事が分かります。
こちらタイ版「กูรุ กูรุ คาถาพาต๊อง」
タイ版は奥付に記載が無いので出版の年月日は不明ですが、CopyRightさんが持っておられるこちらには
「181」ありませんでした。
(ちなみにタイ版は本の読み方が逆になりますので反転してあります)
はい!
いかがでしたでしょうか?
調べると奥の深いグルグルのお話でした。
正直、普通の人にはどうでもいいニッチなお話の数々に、CopyRightさんには、そろそろ嫌になってないですか?と不安になって確認する場面もありました(笑)。
この度ご協力頂きましたCopyRight様、けう様本当にありがとうございましたm(_ _)m
引き続き何か分かりましたら追記致します!
これからも魔法陣グルグルに関する有益な情報を共有して楽しめたらと思います(^^)
それではまた!