ビートメイカーでありながら、ラップもこなすFuzzがシティポップをサンプリングしたアルバム「Mr.F & Many Friends」を8/16にリリースする。
アルバム「Mr.F & Many Friends」は、多彩なアーティストたちが織りなす音楽の宝石箱とも言える作品だ。異なるジャンルが絶妙に交差し、聴く者を魅了する作品群。
主宰であるFuzzと仲間たちが織りなす、本アルバムは聴く者を幻想的でリアルな世界へと導くだろう。
今作唯一のFuzzのソロ楽曲「D∞ms Day」から始まり、
オールドロックの魅力を感じる「Killing Floor」や、
フィメールラッパーを採用した「Flesh Meat」が華やかに躍動。
「Key Master」では王道ヒップホップの真髄が味わえる。
さらに、絶望からの再生を歌い上げる「不死鳥」や、
愛と絆を讃える感動のラスト曲「トワエモア」まで、
様々なエモーションが詰まった楽曲が揃っている。
このアルバムは、リスナーに新たな感覚と可能性を提供し、音楽の魔法に触れる特別な一枚になること間違いなしだ!
①D∞ms Day
重厚でどこか懐かしさのあるバスと管楽器の音色に包まれ、心地よい安堵感を覚えたのも束の間、Fuzzの興味深いリリックが次々と飛び込んでくる。心に秘めた何かを代弁するかのように吐き出される言葉たちに、鼓膜が休まる暇がない。しかし、曲が終わる頃には普段のストレスなど、どこ吹く風。あの安堵感は、処方箋だったのかもしれない。
②Planetary Cypher
エレガンスで哀愁あるイントロから始まり、思わず心が引き込まれる。しかし、アスベストの悲観的なラップが続くと、ビートとラップのアンバランスさに混乱してしまうだろう。だが、Fuzzと空廻のラップが現れることで、その混沌は巧妙に解消されていく。人間の心とラップの世界は地球上で交錯している。人が抱える悩みなど、地球の規模から見れば小さな存在かもしれない。しかし、ラップはその小さな悩みや苦しみを芸術に昇華させる力を持っている。まるで地球が宇宙と交信しているように、ラップは人々の心を揺さぶるのだ。
③Killing Floor
ラップにビートを乗せたのか?!そう思わせられるほどに、主張は控えめだが、存在感のあるオールドロックテイストのビートに耳を奪われた。そしてビートの一種と錯覚してしまうようなラッパーたちのマイクリレーに首を縦に振るより、体を横に振ってしまいたくなった。言葉と音の一体感がそうさせているのか。その答えは様々だろうが、フィンガースナップのお供に最適な一曲であることは言うまでもなさそうだ。
④Who You Think I Am?
まさにオールドスクールのビートがここに現れた!繰り返されるベース音が力強く響き、それを軸にして、シンプルなギターリフが絡み合う。オールドスクール特有のLo-Fiサウンドを彷彿とさせる心地良いビートが広がり、短小節ではあるが、攻撃的なマイクリレーが見事に融合し、曲全体にスピード感と刺激を注入している。聴き手を虜にし、もう少しこの時間を…と、焦燥感が込みあげてくる。
⑤Mutant Plant
リズミカルで心躍るようなシンプルなビートが短小節でループし、終始同じテンションで楽しめる。だが、単調なビートなだけにラッパーの力量を試しているかの如く、嘲笑っているようにも取れてしまう。それを逆手に取り、手のひらの上であえて踊っているかのような、ラッパーたちのフロウが実に気持ちいい。HOOK部分では歌ネタを使用してくるあたりに憎ささえ感じてしまう。
⑥Ice Picks
薄暗いトンネル。霧がかった山道。スローに過ぎ去る景色。背中に冷や汗がしたたる。言葉を吐けば、生ぬるく煙たいリリックが、自分の眼前だけを温める。しかし、その温もりは儚くも一瞬の出来事であり、本物だけが生き残れるヒップホップシーンを揶揄しているかのようだ。フェイクには理解できない本質が、この曲には見え隠れしている。
⑦枯葉を拾うもの
地平線の彼方から昇る朝日のようなビートに、ラグジュアリーさを期待した矢先、アンチロマンの片鱗を垣間見ることになるだろう。まるで言葉で形容することが許されず、ただ静かに心に溶け込むようなビートの変化と、混沌としたポエトリーが、聴覚と心を振り乱すかのようだ。しかし、そんな感情こそ分かち合う価値のあるものだ。
⑧Casio Accordion
劣化したかのようなサウンドが、まるで古びたラジオのように耳に届く。異なるスタイルが交錯する中、各楽曲は個性豊かな表現を放ちながらも、共通して「がんばってるうちはまだまだ」というメッセージを胸に秘めている。アーティストたちは厳しい現実を敢えて見せつけながらも、優しいサウンドに昇華させ、新たな希望を見出すきっかけを与えてくれるだろう。
⑨Copy&Paste
ここ数曲の雰囲気とは一変し、丸ごとサンプリングしたかのような、鮮やかなメロディラインが耳を引き寄せる。その響きに調和するかのようなラップに耳を傾けると、優美な旋律とは裏腹に攻撃的なリリックが織り成すオリジナリティに、見透かされているような危機感を覚える。この曲には、誰もが心を揺さぶられるようなメッセージが巧みに込められている。
⑩Flesh Meat
今作では初めてのフィメールラッパーが登場し、女性特有のメロディアスなフロウが、正確無比なハンドクラップのリズムに乗って華やかに広がる。人を寄せ付けぬ未開の海で、優雅に歌う人魚のように、繊細でありながらも力強いラップが繰り広げられ、聴く者を心地よい世界へと誘う。短い曲ながら存在感は抜群で、まるで新たな感覚と出会ったようだ。
⑪Great Number
ジャジーでスタイリッシュな鍵盤の音色が耳に心地よく響き、これ以上ないほどにラップと融合して、まさに稀有な楽曲が完成した。この絶妙な組み合わせこそが、まさにリリシズムの真髄だろうか?穏やかなooteeのフロウは、波風立たぬ心地よさをもたらす。一方Fuzzの力強いリリックは、対照的なメッセージを届けている。夢追人は、この対比に何を思うのだろうか?成果よりも経過を楽しむ無邪気な心を取り戻すために、これ以上ない最適な楽曲といえるだろう。
⑫Scratch Avalanche
もし楽曲に「セクシー」という言葉を当てはめるなら、この曲に答えがあるかもしれない。透明感あふれる音色に、大胆に重ねられたラップが、まるでノイズを表現しているかのようだ。このノイズが打鍵の優しい音を引き立て、独自の色気を醸し出している。さらに、18WAKAME+15のトーキング・ブルースが絶妙に絡み合い、セクシーというワードがピッタリだろう。
⑬Key Master
曲のテーマと世界観がFuzzとMINAZUKIのラップで見事に表現されている。特に注目して欲しいのは、Fuzzの1バース目終盤だ。エフェクトのかかったギターリフが鳴り響き意識がビートへ向いた瞬間、MINAZUKIの甲高い声リズミカルなバースインで一気にラップへ意識が引き戻される。ビートに負けないラップが際立ち、これぞ王道ヒップホップ。これぞマスターキー!だと叫びたくなるような一曲だ。
⑭Midnight Dope
一日の幕が下りるとき、街灯だけが照らす静寂の中、都会のシルエットを連想させるビートが響き渡る。そこから一変して始まるマイクリレーに一層耳を引き込まれる。幻想的でありながら狂気にも似た、ラッパーたちのフロウに、個性豊かな「Dope」が絡む。夜は一日の始まりなのか?終わりなのか?各々のDopeという言葉の答えが、この曲には詰め込まれているようだ。
⑮Be Free
束縛から解き放たれる喜びを、音楽は教えてくれる。「Be Free」のメロディは、心の奥底に秘めた欲望を解き放ち、限界を乗り越える勇気を呼び起こす。曲のリズムとラップが織りなす響きは、新たな世界への扉を開く鍵となる。この曲は、自由への渇望を胸に、進むべき未来への一歩を踏み出す勇気を与えてくれる。
⑯Money Folder
野心と成功への追求を象徴するかのような一曲。未来へのステップを刻むような図太いビートに、貧困と格差を乗り越えるための、エネルギーたっぷりのラップがひときわ輝きを放っている。この世界では、情熱や創造性が価値を持つ。お金はあくまで、価値を計る指標に過ぎない。己が生み出す「価値」こそが、成功へと導いてくれるのだから。
⑰不死鳥
HERO IS DEAD。過去の英雄はもういない。今ここにあるのは、絶望の中から立ち上がり再び羽ばたく力強さだけだ。そのメロディは深い谷間からの躍動感を伝え、リリックは逆境に立ち向かう勇気と希望を歌い上げる。まるで炎に包まれた鳥が、その灰から再び生まれ変わるかのように、新たなる可能性を紡ぐ。人生の厳しい瞬間さえもが、自分のストーリーの一部であり、自分の力で立ち上がることを思い出させてくれる。
⑱静けさの前の嵐
硬質なビートは、緊迫感が漂い、静かな大気が蓄えられ暗雲が空に広がるような進行を続ける。メロディは優し気で、張り詰めた糸が切れてしまう不安を包み込むように流れる。3人のMCは、予想だにしない未来を語りはじめる。それぞの言葉、そして音の洪水が平穏を引き裂き、平穏を取り戻すために、再び歩みだす。予測不可能な未来を描き、逆境に負けない意思を讃えているかのようだ。
⑲Gaze Duration
まるで視線が一点に釘付けにされるように、メロディは鼓膜を捉え、心に響き渡る。他人の視線に疲れ果てることもあるだろう。そんな気持ちはゴミ捨て場に置いてくればいい。すべては自分次第で、手放すことができるのだから。夜の扉を開く勇気があれば、一瞬の眺めが永遠に続くかのような感覚を味わえ、音楽がもたらす魔法に触れることができるだろう。
⑳トワエモア
最後を飾るのはこの楽曲。ここまでFuzzとフレンドたちが作り上げてきたアルバムの集大成かのように、時を超えた情熱と絆を奏でる一曲が「トワエモア」だ。そのビートは、壮大なスケールで、まるで気体のように心地よく広がり、感情を最高潮に高ぶらされる。曲の要所で聴かれる、Fuzzの「幸せになれ」という恥ずかしいくらいに真っ直ぐなメッセージには、愛と共に歩む約束が込められているようだ。それに共鳴するように導かれ、結ばれた仲間たちの魂を讃えるような、永遠の愛の歌になるだろう。