『Mr.F & Many Friends』解説 By Fizz / Fuzz a.k.a. F***word

【始めに】
 去年の10月頃に今回のアルバムの構成を思いつき、そこから約10ヶ月でリリースとなった。
 Featラッパーは総勢30名。Rapを始めた当初の古い仲間からOne Vinyl Beats繋がりで最近知り合った新しい仲間に片っ端から声を掛けて協力してもらい完成に至った。
 このアルバムのBeatは2年前に制作した『DOOM vs City Pop』というMF DOOMのRemixアルバムで使用したBeatをMIXし直して使用している。つまりRemixのRemixという事だ。
 まだ腕が未熟でBeat makeのセオリーから逸脱している物も多く参加してくれラッパーには乗りづらい思いをさせたかもしれないがそれは一興と許してほしい。
 
【アルバムの概要】
 上記にあるようにこのアルバムのBeatはMF DOOMのRemixアルバムをセルフRemixしたものである。それに因んでFizzのLyricはMF DOOMの歌詞を引用している箇所がいくつもある。
 アルバム全体としてはMF DOOMの1stやMADVILLAN、それにDOOMが監修したMonster Island Czarsなどをオマージュして制作した。
 Fizzはアルバムごとにプロットやコンセプトを造ってから制作に入るのだが、今回のアルバムのイメージは昭和ゴジラの『怪獣大戦争』である(Monster Island Czarsもこのコンセプトで創られている)。ゴジラのもつシリアスさは一切抜きでとにかく怪獣が沢山出てきて戦う娯楽映画だ。       このアルバムも重いテーマや深いテーマというのものは敢えて入れずラッパーという怪獣たちを沢山呼んで好き勝手に暴れてもらった。肩肘張らずに気楽に楽しんでもらえれば幸いだ。

【各曲解説】 
1.D∞ms Day
 アルバム内唯一のFizzソロ曲。Redbullには呼ばれることは無いだろうと思い自主的に64小節RAPした。DOOMS DAY→終末→終末医療という発想で医療用語を交えながら、HIPHOPシーン(シーンって言葉は嫌い。単なる村社会に過ぎないから)の病んだ現状を揶揄するリリックを書いた。
 因みに医療と言っても救おうとするわけではない。ブラックジャックのDr.キリコのように手遅れの患者は安楽死させた方が患者の為だという考え方だ。
 承認欲求に取り憑かれた末期患者の生命維持装置を切るつもりでラップした。
 この曲はFizzがVillanとして生きていく決意表明である。

2. Planetary Cypher ft. アスベスト, 空廻
 Fizzがラップを始めた頃からの仲間を呼んで制作した一曲。
 Cypher→0→円→縁→宇宙のテーマで書いてほしいと二人に伝えたがアスベストさんに関してはこのテーマからはあまりポジティブな歌詞が書けないと事前に言われたので思ったことそのまま書いてくださいとお答えした。
 なのでこの曲を聴いた時にもしかしたらアスベストさんのverseに違和感を覚える人もいるかもしれない。俺はそれでいいと思う。
 テーマは人々の縁、繋がりである。一緒に曲を作るからと言って自分の感情を押し殺し周囲に合わせることをさせてはテーマに反するからだ。
 「和を持って尊しとなす」から愛を抜いたものが「同調圧力」の正体だと思う。
 隣の人がどんな意見を持ってても別に良いだろ。サイファー内で誰かの発言に嫌でも同意しなければならなくなったらそれはHIPHOPじゃ無いだろ。だから思うがままに書いてもらった。
 空廻君はやっぱりさすがだね。上手すぎる。押韻が巧みすぎてもはや同じ言葉を繰り返し言ってるだけなのでは無いかと疑うくらいに上手い。メロディーにもアプローチできてリリシストでハードライマーという三拍子揃った稀有なラッパーだ。

3.Killing Floor ft. sho-ichi, TAKA
 Fuzzが主催を務めるPhantom Tr∞perzのメンバーでもあるTAKAさんとそのダンス仲間のsho-ichiさん。ダンサー2名をfeatした曲。タイトルのKiilingは殺し文句やマダムキラーなどの相手を魅了するという意味のKillingね。
 やっぱりダンサーはラップが上手い。リズムキープが正確なのよ。
 ビートもファンク色のあるHIPHOPの王道オールドスクールなビートだからダンサー2名のリリックともピッタリハマった。
 FizzのリリックはMF DOOMの「it’s ain’t nattin」から一部引用している。

4.Who you think I am ? ft.瑞雲the Third,Teycs,ootee,MC Beto,Ark DA Aegir,Wambo,FRANJA,ろはに,MONO_Holy Beggar,TJ
 4ヶ国語を交えたマイクリレーをプロデュースできるのはおそらく日本でFuzzくらいだろう。
 日本語、スペイン語、ポルトガル語、英語のマイクリレーが疾走感あるワンループで矢継ぎ早に切り替わっていく。
 Fuzzの夢の一つに「God bird」を超えるマイクリレーを生み出すというものがあるのだが少しは近づけていれば嬉しい。
 因みに曲のタイトルとテーマはMF DOOMの曲からまんま引用している。
 1人目は瑞雲。Flowに癖があるので切込隊長に任命した。
 2人目はTeycs。落ち着いた声質とスペイン語Flowがかっこいい。
 3人目はootee。日本語ラップど真ん中なFlowで音抜きの部分もバッチリはめてくれた。
 4人目はFizz。言葉数の多いファストラップで子音を合わせたライムでスピットする。
 5人目はMC Beto。Fizzのラップの大先輩。ポルトガル語Flowがテクニカルでかっこいい。
 6人目はArk若手ながら他のラッパーに引けを取らないスキルでバトンを回す。
 7人目はWanbo。声質がThe ラッパー。しゃがれた声のスペイン語Flowが一際目立つ。
 8人目はFRANJA。彼はガヤの入れ方も上手いしラップも歯切れが良くかっこいい。
 9人目はろはに。的確にドラムにはめてくるラップ。このアルバム内唯一会ったことが無い。
 10人目はMONO。倍速FLOWがめっちゃかっこいい。1人異形のモノが混じってる感じ。
 11人目はTJ。英語と日本語のバイリンガルラップでこのリレーのゴールテープを切る。
 因みにこの曲は後日アカペラデータを無料配布してRemix祭りを開催する予定。instも無料配布してラッパー達にRemixしてもらっても良いかもしれない。
 原曲を超えられるものなら超えてみろって感じかな。






5.Mutant Plant ft. satrack,Gari-Guerrilla,BKN
 Phantom Tr∞perzのメンバーでもあるsatrackのCrew「珍酒運転」とBeat makerのBCOGの変名であるBKNに参加してもらった曲。
 当初は珍酒運転のみの参加予定だったが当日BKNも飛び入りで参加してくれた。しかもHOOKまで書いてきてくれたのでそれをそのまま採用させてもらった。
 90年代の日本語ラップフレイバー全開の曲になった(特にHOOK)。

6.Ice Picks ft. satrack,Bank
 引き続き珍酒運転からsatrack、それと大阪のラッパーBankに参加してもらった。
 このBeat、ダンサーからは評判良いんだけどラップを乗せるとなるとかなりやりづらい。ドラムをかなりズラして打ち込んだので正直制作した本人すら大変だった。
 それでもfeatした2名はしっかりラップしてくれたので有難い。
 テーマは氷(功利)の業界を3本のIce Pickで砕く。
 Bankの間を活かしたラップは上手いなと思う。

7.枯葉を拾う者ft.18WAKAME+15  
 一曲で4回Beatがchangeする曲。元はMF DOOMの『Change the Beat』(原曲は6回changeする)。この曲にハメられるのはWakameさんしかいないと思った。セオリーに囚われた並のラッパーだと戸惑って何をすれば良いのか分からず棒立ちになる。しかしWakameさんはある種日本語ラップの文脈の中にはいない人なので自然と乗りこなすだろうなと思って指名した(っていうかあの人かなりスキルフルなんだよな)。
 Wkameさんのリリックは辞書から適当に選んだ言葉を繋ぎ合わせたかのようだ。意味よりは響きで世界観を構築するスタイルなんだと思う。
 詩の技法にカットアップというものがある。新聞や雑誌の言葉を切り抜いて混ぜ合わせランダムに繋ぎ合わせて詩を創るという制作方法だ。これにより作者本人の意思が詩に繁栄されず、本人の想定外のものが生み出せる。Wakameさんの詩はまさにそんな感じ。Wakameさんの声帯を通して別の何かに歌わせようとしるような印象を感じる。

8.Casio Accordion ft.NAKA THE WORLD( thee dead man’s curve )
  NAKA THE WORLDもFizzがrapを始めた当初からの付き合い。彼は本当にオリジナリティある言葉選びができるラッパー。一聴すると下手なのだがそれを補って余りあるリリックのパンチ力やライムのセンスはFizzも真似できない。そしてかなりのDiggerだ。彼がFizzのスタジオに持ってくるネタにハズレが無い。
 ミュージシャンであるラッパーがHIPHOPの話すらできない事はもはや当たり前になってしまっているのでそういう奴らを片っ端からDisるというのがテーマ。
 サンプリングしている声ネタはお笑い芸人の「ニューヨーク」という二人組のコント『路上ミュージシャン』。Youtubeに上がっているのでぜひ見てほしい。Fizzは初見で腹抱えて笑った。
 BeatはMADVILLAINの『accordion』をFizzが友人からもらったCASIOのキーボードを弾いてカバーしたもの。この曲だけCity Popサンプリングでは無い。
 thee dead man’s curveというのはFizzとNAKA THE WORLDのユニット名。現在5曲入りE.Pを制作中で10月あたりにリリース予定。

9.Copy&Paste ft.藤KILLA
 藤KILLAと知り合ったのはOVBのオフ会。そこでリリックの書き方の話になった。
 現在のラッパーの多くはまるでコピペしたかのように同じリリックが多いという話をした。それがこの曲が生まれるきっかけになった。
 この曲に限らずこのアルバムのほとんどはBeatがPOPでメロウなものが多い(City Popからサンプリングしているから当然である)。
 だから参加者全員にBeatに感情や思考を持っていかれないようにしてくれと伝えた。
 MF DOOMの曲もBeatはPOPでオシャレだがリリックがDOPE。そのアンビバレントな感覚(エヴァやバトロワで残虐なシーンでクラシックが流れるとドラマチックになるのと一緒)が彼の魅力でもあるのでそれを再現したかった。
 藤KILLAは声が優しくPOPであるが故に辛辣な事を言わせると映画に出てくる殺人ピエロみたいな雰囲気になるな。Fuzzの作戦通りだ。
 この曲でもFizzはMF DOOMのリリックをいくつか引用している。


10.Flesh Meat ft.3aayo
 3aayoとはOVB繋がりで知り合ったフィメールラッパー。元々弾き語りをしており、さらに自分でもBeatを制作しBeatアルバムまでリリースしている。
 音楽の素養があるからやはり上手い。流れるような美麗なFLOWを聴かせてくれる。
 Recしたデータも波形が綺麗でとてもMIXがやりやすかった。3aayoは総合力がとても高いラッパー/シンガーだ。この先どう化けていくか非常に楽しみだ。
 この曲はMADVILLAINの「Meat Grinder」のオマージュ。
 3aayoに伝えたテーマは「過去出会った憎い男をラップで挽肉にしてくれ」だ。
 これもBeatがPOPなのでテーマを辛辣にしたかった。女性一人生きていれば挽肉にしたい男の一人や二人くらいはいるだろうと思いこのテーマにした(酷い決めつけである)。


11.Great Number ft.ootee
 Fizzはこの曲はかなり苦戦した。何故かというとooteeさんが大正解のFLOWを出しているからだ。大喜利で大正解が出た後だと回答を出しづらいのと一緒である。
 ooteeさんはとにかくRapが非常に上手い。落ち着いたFlowで的確にBeatのツボを押さえてくる。もうooteeさんのソロ曲で良くないとまで思った。
 4曲目のマイクリレーでも3人目でooteeさんには参加してもらっているがやはり的確なのよね。音抜きの部分のハメ方もこちらの意図した通りやってくれる。Beatから制作者の意図を読み取るのはラッパーとして非常に大切なスキルであるがooteeさんはそれができている。本人もBeatを制作しているから出来ることだろう。
 やはりラッパーは自分でもBeatを制作できると頭一つ二つ抜きん出ることができるのだな。
 この曲もMADVILLAINの「Great day」をオマージュして制作した。


12.Scratch Avalanche ft.18WAKAME+15
 Wakameさん参加の2曲目。古い戦後のラジオから流れるような歌と声が絶妙にマッチしている。歌詞に意味を込めることに意味なんて無いのではないかと思えるくらい心地が良いFLOWだ。そういえばWakameさんはギターもできるしタブラも叩けるという何気に器用で凄い。行動力や制作意欲も高いので毎月何かしらリリースしてる。
 JAZZの雰囲気にWakameさんの声とFLOWが絶妙に絡み合っている。頼んで正解だった。
 この曲もMADVILLAINの「AVALANCH」オマージュ。
 余談だけどNAKA THE WORLDに聴かせたらかなりWakameさんのラップを気に入っており一度飲みたいとまで言ってた。

13.Key Master ft.M1NAZUK1
 フィメール二人目のM1NAZUK1。彼女も10年以上前から付き合いのあるラッパーだ。
 かなり壮絶な環境の過去を生き抜いてきている(詳しくは彼女のTwitter、いやXのnoteに書かれているので一度読んでみると良い)。
 まず声がとても良い。女の子の可愛らしさと妖麗な大人の女の色気が同居している声だ。彼女と話していると同時に二人が喋っているのかと錯覚するくらい声に特徴がある。聴いていて心地が良い。これはラッパーとしてかなり強い。しかもBeat Makemもできるので非常にマルチな才能がある。
 そしてシンプルに歌やラップが上手い。正直もっと売れて良いと思う。俺としてはどんどん作品出せよと常々思っている。
 この曲のテーマは「鍵師」。
 ヘッドフォンを付けてサンプリングポイントを探しながらレコード回したりMPCのダイアルを回す姿が金庫を開けようとする鍵師の姿と重なったのでこのテーマにした。

14. Midnight Dope ft.Z.I.O-RAMA,Ark DA Aegir,瑞雲 the Third
 Z.I.O-RAMAさんと瑞雲はFizzがラップを始めた当初からの付き合い。Arkはここ最近知り合った新しい仲間。新旧の仲間を集めたマイクリレー。全員ラップが上手い。テクニカルなマイクリレーになったと思う。
 Z.I.Oさんのラップはやはり松屋と切り離せないようだ。それを抜きにしてもこの人ラップが上手いのよ。Beatに対して少し前のめり気味に入って頭韻、中間韻を駆使してグルーヴを作っていくスタイル。彼はフリースタイルと楽曲のラップに差がないのが凄い。
 ArkはTRAP世代のラッパーらしい乗り方。彼もかなりテクニカルだ。研究熱心でしっかり新譜を幅広くチェックしているのでこれから先の成長が楽しみ。
 瑞雲はフリーキーで癖のあるFLOWが特徴的。シンプルにrapが上手いので大体どんなBeatも平均的にこなせる器用さがある。
 Fizzはこの曲ではHOOKのみの参加。なぜなら小節数を勘違いして客演を呼んだので自分のVerseが無くなってしまったからだ。




15.Be Free ft. HONOR,TOMU,Bank
 この曲は結構難しかった。メロディが無くドラムとベースでほぼ成立しているBeatは非常にラッパーの実力が繁栄されやすい。シンプルなものほどごまかしが効かない。
 二人目のラッパーHONORは町田相模原の若手ラッパー。彼は映画を結構見ているので気が合う。この曲のテーマも彼が提案してくれたものをそのまま採用した。映画を観ているラッパーは歌詞にプロットやシナリオを付けるのが上手いと思う。大体下手で個性が薄いラッパーは映画、アニメ、マンガなどに触れてないんだよな。映画なんてコスパの良い教材だから積極的に観た方がいいのにな。
 TOMはOVBのイベント『Meet the Beats』で知り合ったラッパー。分かりやすい言葉書かれた歌詞なので多分ラップを聴き慣れてない層にはこのくらいシンプルなものが丁度良いのかもしれない。
 Bankさんは2曲目の参加。自信が店長を務めるお店とミュージシャンとしての二足の草鞋をライムしている。やはり働きながらも音楽を続ける奴らの言葉強い。

16. Money Folder ft.Ark DA Aegir, 瑞雲 the Third
 この曲もMADVILLAINの「Money Folder」のオマージュ。
 ドラムが妙に揺れているので非常にやりづらいBeatではあるが参加したそれぞれのラッパーのスキルがしっかりしていたので思いの外曲として成立したのでよかった。
 金が無い、時間が無いは言い訳にもならない。そもそもHIPHOPは金も時間も権利も明日の補償も何も無いところから生まれた文化にも関わらず、金と時間が無いを口癖にして工夫を怠るラッパー供を刺し殺すつもりでリリックを書いた。

17.不死鳥 ft.テールー
 テールーさんもOVBで知り合ったラッパー。実はかなりのベテラン。日本語ラップの生き字引かもしれない。そんなベテランの彼がOVBをきっかけに活動を活発化せた姿を見て不死鳥というテーマにした。イントロのナウシカサンプリングのデータが送られた時には爆笑した。
 リリックも過去から現在を吐露するようなリリックでテールーさんのこれまでの生き方が時系列順にライムされている。この曲で書かれなかったテールーさんの未来がどうなるのかはこれからの彼の活動で示してくれることだろう。
 Fizzは実は三連符の方が得意なのでM16カービンのような三連フルメタルジャケットライムで押し切った。

18.静けさの前の嵐 ft.FUNI,MC Beto
 Funi、Beto、この両者は実はFizzがラップをやり始めるきっかけになったお二人。
 Fizzがまだ大学入ったばかりの頃に両名と知り合ってフリースタイルを聴かせてもらったことがきっかけで自分でもラップをし始めた。
 このお二人は過去大手メジャーでのリリース経験もあるとても凄いラッパーだ。その二人がFuzzが作ったBeatの上でラップをしてくれいるのは非常に感慨深い。
 ラップのスキルは間違いない。Funiさんのストーリーテリングの能力やBetoさんの日本語では再現できないFlow。日本語とポルトガル語のシンコペーションを存分に楽しんでほしい。
 この二人のラップを長く聴いてもらいたくてHOOKは作らなかった。

19.Gaze Duration ft.M1NAZUK1,Z.I.O-RAMA
 この曲はアルバム内でもFizzのお気に入りの一曲。やはりベテラン3名が揃うと非常に安定感があってカッコいいものが出来上がるな。
 テーマはM1NAZUK1の提案をそのまま採用して「幻覚/幻想」となっている。Beatの浮遊感や子守唄のようなメロディとマッチしたテーマだ。
 何度も言うがやはりM1NAZUK1は上手いのよ。RECも早いしとても仕事のできるラッパー。
 その流れからZ.I.Oさんのアブストラクト(松屋)なラップが少し路線を外れ気味に進むが最後Fizzが元に戻すと言う絶妙な3人のコンビネーションが気に入っている。
 M1NAZUK1はメロディとリズムの間を縫うようにラップし、Z.I.Oさんは前のめり気味に突っ込んだラップ。FizzはBeatに持たれかかかるようにラップする。ラップのお手本としてこれ以上ないと思う。自画自賛だがこれは名曲。


20.トワエモア ft.Christaman-Key, あんねKT
 実はラストを飾るこの曲が同時にこのアルバムが生まれるきっかけにもなっている。
 Beat Makeに行き詰まっていた時にこのサンプリング元を見つけてMF DOOMをイメージしたので、そのイメージに任せて適当に作ったら物凄くしっくりきた。それがきっかけとなりDOOM Remixが生まれ、今回のこのアルバムに繋がった。 
 KeyさんとあんねさんもやはりOVB繋がりで知り合った。Keyさんの楽曲であんねさんが楽曲提供している「GOSPEL 素っ裸の美しさ」という曲をMeet the Beatsで聴いた時にトワエモアのBeatが頭をよぎった。そこからこの総勢30名のアルバムの構想が浮かび今に至る。
 ラストはこの二人以外いなかった。他の楽曲と比べてかなりピースフルな曲になっている。それはFizzが「GOSPEL 素っ裸の美しさ」に影響を受けたからに他ならない。
 タイトルのトワエモアはフランス語で「あなたと私」。それをテーマにしようと伝えたところ、あんねさんから共通のワードをそれぞれのverseに取り入れようと提案があり採用した。
「満点の星空」という共通ワードがリリックの中にどう使われているか探してみてほしい。
 Keyさんのverseでは子供とKeyさん、あんねさんverseは旦那とあんねさん、Fizzのverseでは仲間とFizz、とそれぞれの「あなたと私」がラップされているのも比較してみる面白い。
 余談だがこのアルバムは実は7月中に出せた。なぜリリースを8/16にしたかと言うとKeyさんのリリックの中に「夏の夕暮れ」というWordがあったので夏の終わりかけのお盆明けに出そうと思ったからだ。


【最後に】
 ここまで読んでくれたあなたはNice DOOM !!
 解説だが四方山話だかよくわからないものになってしまったがとにかく有難う。
 参加してくれた30名のラッパー全員に感謝。
 Fizzが今回のようなFeatアルバムを作ろうと思ったきっかけについて少し話しておく。
 配信が盛んになって誰でも気軽に曲をアップロードできるはずなのに人目を気にして二の足を踏んでいるラッパーが多いなと言う印象がある。
 微力ながらFizzがプロデュースしたアルバムがきっかけで一歩目を踏み出したり、そのラッパー自身の知名度向上の助けになればと思い沢山のラッパーに参加してもらった。
 多くのラッパーは人目を気にしクオリティ上がってから出そうと考える(他分野のクリエイターも大体そうだろう)。上手くなったらリリースするのではなく、リリースするから上手くなる。
 このアルバムのBeatは2年前に作られているものなので現在のFuzzのBeatと比べたらお粗末な部分も多い。
 ラッパーのスキルも千差万別で上手い人もいれば正直下手な人もいる。
 別に良くない?
 上手いから感動するわけではないのよ。下手でも感動させることはできるのよ(まぁ、このアルバムが感動する作品かどうかは別として)
 つまり伝えたいことはアマチュアリズム全開でどんどん作品は発表した方が良いと言うこと。
 それと単純に楽しめるものを作りたかった。
 どれだけバズるか、それがどれだけお金になるかばかりが先行していて、音楽を創作を単純に楽しむことが忘れ去られているように思う。
 みんな学生の頃数字で評価されて価値を決めつけられるの嫌いじゃなかった?
 なんで大人になって嫌いな格付け頑張ってるの?
 このアルバムは流行り廃り、功利主義などはどこ吹く風でシンプルに音と言葉の創作活動を楽しむ音楽本来の姿を見せたかった。
 お金を稼ぐことはもちろんとても大事だがそれ以上に楽しむことを大事にしたかった。
 伝わるか分からないけど「カイジ」でエスポワール号のラストでカイジが損得抜きで一人のおっさんを助けたアレだ。
 多数原理が支配するナニカに対して楽しむ姿を見せることで中指を立てたかったのだ。
 俺のverseは基本的には1日1曲で歌詞を書き上げ、Recは1日1曲〜2曲ペースで進めた。多分20曲全部の制作には1ヶ月掛ってない計算になる。そのくらいお手軽でも楽しめるものは作れるんだよ。
 それとマスタリングを担当してくれたEnd of youthさん有難う。
 彼はPhantom Tr∞perzのメンバーでもある。積極的にリリースやライブをしている行動力のあるBeat makerだ。今後はMIXマスタリングの依頼も受けていく予定なのでぜひ彼に依頼してほしいと思う。
なんだかつらつら書いていたら長ったらしくなってしまった。俺の頭の中のDOOMが「shut up,shutting up」とスピットしているのここまでにしておく。 
最後に改めて関わってくれた皆様に有難う。
解説をしてくれたSilly boyさん、ヨウカイさんのお二人にも有難う。
ぜひこの二人の解説も併せて読んでほしい。
では皆様、Have a DOOMS DAY!!