とある夫婦の晩酌トーク

【タトゥーってどうなんだ問題】

 

 

 

 

 

『時事ネタいっちょ噛み大作戦んんんんんんん!』

 

 

『なんだなんだ騒々しい・・・』

 

 

『説明しよう!

時事ネタいっちょ噛み大作戦とは世の中を賑わせている芸能ネタに上から偉そうな言及をして世の注目を集めアクセス数を稼ぐというゲスい売名のことであーる』

 

 

『おい、今いろんな人を敵に回さなかったか?大丈夫か?』

 

 

『怒られたら謝る

 

 

『うむ、偉いぞ』

 

 

『タレントのりゅうちぇるさんがインスタで奥さんと子供の名前を入れたタトゥーをアップしたことが物議を呼んでいるそうであります

 

 

『へえ』

 

 

『一昔前よりタトゥー民が増えたとはいえまだまタトゥー後進国と言われる我が国ニッポン、果たしてタトゥーは是か非か、その見解やいかに』

 

 

『へえ』

 

 

『貴様ぁ!もうちょっと興味を持たんか!

 

 

『いや、そんなことで炎上するとか平和だなと・・・

 

 

『ネットってそういうところよ

まず発信元となる人が複数に叩かれるだろ?

そうすると今度はその叩いた複数を叩く人たちが現れるわけだ

そうなるとまたそいつらを叩いたやつを叩く輩が大挙として押し寄せ

もう最後の方で参戦したやつらなんて発信元の文章すら読まないでよく理解もしていないのに叩き始めるんだよ

そうやって炎上というものは延焼していくってことさ』

 

 

『ネットこわい

 

 

『ねえ、タトゥーってどんなイメージある?』

 

 

『そうだなー、なんかサッカー選手に多いイメージかな

 

 

『ああ、多いよね

ワールドカップとか見ていても各国のチームに必ずタトゥーを入れた選手がいたもんなー

韓国の選手にもいたような気がする

誰もタトゥーを入れていない日本が異質なチームに見えたよ』

 

 

『なんかそういう決まりでもあるのかね?タトゥー入れたら代表入れない的な規則が

 

 

『ありそう、めっちゃありそう

インタビューの受け答えを聞いていても日本の選手ってみんな優等生なんだよね

おそらく「スポーツマンとはこうである!」みたいなマニュアルがあって訓練されているんだよきっと』

 

 

『日本は校則とか社則とか、規則で個性を奪うのがお家芸的なところがあるからなぁ

 

 

『日本にもズラタンとかぺぺとか悪童的な選手がいたら面白いのに』

 

 

『誰だ?わからん』

 

 

『NBAで言ったらアイバーソンやロッドマンみたいな人たちよ

 

 

『ますますわからん・・・』

 

 

『日本には天才はいるけど変態はいないんだよ

変態って天才を超える唯一の存在じゃん?

ワールドカップなんてド変態が集う大会なんだよ

世の常識を超越したド変態たちがどっちがド変態かを競っているわけだ

その頂点に立ったド変態がいつも歴史を変えるのよ

天才に革命は起こせない

歴史を変えるのはいつもド変態なのよ』

 

 

『話が逸れてるから戻すぞ

お前の友達にタトゥー入れてる人とかいない?』

 

 

『あー、一人いるよ、ワンポイントだけど

 

 

『それってどう思う?

 

 

『最初はびっくりしたけどなー、とくに悪感情は湧かなかったな

 

 

『やめてほしいとか、友達やめようとは思わなかった?』

 

 

『そういうのはないな、その子は素直でいい子だし、タトゥーでマイナスなイメージがつくことはなかったよ』

 

 

『じゃあ初対面の人の襟元から唐獅子牡丹のタトゥーがチラチラ見えていたらどう思う?

 

 

『こいつやべえ!!って思う

 

 

『だろ?結局その人のことを知ってるかどうかが全てなんだ

お前は友達の内面をよく知っていた、だから外見的なイメージに惑わされることもなく付き合いを続けた

しかし初対面の人の内面なんて知らない、どうしても視覚情報からその人の人となりを図ろうとするわけだ

身嗜みがちゃんとしている人なら内面もしっかりしている人だとお前は思うだろう

そうやってその関係を繋いで今度はコミュニケーションからその人の内面を知ることになる

その内面を知って「こいつクズだな」と思うこともあるわけで、人は外見ではないということを学ぶことになる

でも外見で「こいつやべえ!」と思ったらもう終わりなんだよな

内面を知ることもなくお前の中でその人はずっとやばい人としてインプットされてしまうだろう』

 

 

『外見は大事ってこと?』

 

 

『大事だろそりゃ、第一印象なんて視覚情報だけなんだから

視覚情報という地区予選で勝てなきゃコミュニケーションという甲子園で戦うこともできない

例えばお前が全身にタトゥーを入れたとする

オレはお前のことをよく知っているから外見から嫌いになることはないけど

これからお前と出会う人はその外見でお前をジャッジすることになるんだ

本当の内面を知ってもらうための障害になってしまうということさ』

 

 

『まだタトゥーに反社会的なイメージがある日本ではタトゥーを入れるのはリスクがあるってこと?

なんだか世知辛いなぁ・・・』

 

 

『そのイメージを変えるためにはやっぱり犠牲が必要なんだよなぁ・・・

それをやろうとしてるのがこのりゅうちぇるくんじゃないの?知らんけど』

 

 

『タトゥーにわりと寛容なヨーロッパもそこに至るためにたくさんの犠牲があったんかね?

向こうはアートが盛んだもんなぁ、たくさんのアーティストの礎が今を作っているのか・・・感慨深い』

 

 

『もちろんタトゥーを入れるのは自由だと思う

でも偏見があることは覚悟しなければならない

芸能人やアーティストならいいかもしれないけど、一般の人にはまだちょっとハードルが高すぎるんじゃないかなぁ』

 

 

『好きな芸能人がやってるからって安易に真似するなよってことですね先生!

 

 

『そういうことよ

お前がタトゥー入れるとしたらどんなタトゥー入れる?

 

 

『手の甲に「〆切厳守」って入れる』

 

 

『うむ、早く仕事しなさい』

 

 

『まぁこれにて一件落着ってことで』

 

 

『押忍!』

 

 

『せーの』

 

 

『かんぱーい』