とある夫婦の晩酌トーク

喧嘩にならない方法って何問題

 

 

 

 

 

『お便りが来ています』

 

 

『んん?なんだ?』

 

 

『この晩酌トークにメールをもらったのよ』

 

 

『ええ!?あのアドレスってライブドアブログのやつじゃ・・・』

 

 

『シッ!ここはアメブロよ、その名を出すと消されるわよ・・・

 

 

『サイバーエージェントこわい』

 

 

『暗殺のプロよ、裏ではゴート札を作ってるわ

 

 

『それってなにオストロの城ですか・・・』

 

 

『オートジャイロを奪う気だわ!』

 

 

『いいから本題に入れ・・・』

 

 

『おっと、すまんすまん

えーとね、なんか夫婦喧嘩にならない方法を教えてくださいだって』

 

 

『夫婦喧嘩?

うーん・・・ある程度は仕方ないんじゃないの?

一緒に住んでいれば衝突もあるし、喧嘩で分かり合えることもあるんじゃない?

本当に険悪になったら喧嘩もできないじゃん』

 

 

『喧嘩するほど仲がいいってこと?』

 

 

『そうわよ

 

 

『でたわね』

 

 

『べつに能動的に喧嘩しようとする必要はないと思うけど、喧嘩を避ける必要もないと思うんだ

言いたいことを言い合って、ぶつかり合って、それで通じ合えることもあるんじゃない?』

 

 

『うーん・・・

そういう価値観がデフォになってることが多いけどさ、それって男同士の喧嘩に限ると思うんだよなぁ』

 

 

『おいおい二元論はやめとけよ、男女で分けるのは乱暴だと思うぞ

 

 

『ああ、すまん

二元論じゃないけどさ、なんとなく喧嘩で関係が深まるのは男の方が多い気がしてな

女同士の喧嘩は喧嘩したらそれっきりって関係が多いんだよ』

 

 

『あー、傾向としてはあるかもなぁ

 

 

『喧嘩で仲が深まる人種がいるってことは否定しないけど、私みたいなラグジュアリーなキラキラ系港区女子には喧嘩で関係が深まるってよくわからんのよ』

 

 

『駿河区女子じゃんお前・・・都内でもねえ・・・』

 

 

『そもそも言いたいことを言い合うっていうけどさ、それって意味あるのかな

主張を聞き合う耳がなきゃコミュニケーションは成り立たないじゃん

その耳が喧嘩腰の人にあるとは思えないんだよ

言いたいことを言い合ってお互いにスッキリするのかもしれないけど、結局相手の主張は耳には入っていないわけで

それって分かり合えることになるの?

ただお互いの排泄欲求が一時的に満たされただけで何の解決にもなっていないと思うんだよね』

 

 

『よーし、めんどくさいことになってきたぞ』

 

 

『だいたい感情的になってる人ってうまく言語処理できていないんだよね

バーサーカーがパルプンテ食らったみたい

言ってることが支離滅裂で整合性もないし、メッセージ性

なんて「なんか怒ってる」ってことくらいしかわからないじゃん

錯乱して吠えてるだけの獣の一体何を理解したらいいのか私には全くわからんのよ』

 

 

『まぁ理性的に話し合うのが一番だとは思うけど、喧嘩になってしまうのは環境のせいもあるんじゃないかな』

 

 

『環境?』

 

 

『そう、環境

例えばオレらに喧嘩と呼べるものは過去を振り返ってもあまり記憶にない、それはなぜだと思う?』

 

 

『うーん・・・私がいい女だから?

 

 

『(無視)うちにはお互いの逃げ場所があるからだよ』

 

 

『逃げ場所?』

 

 

『そう、逃げ場所

お互いの個別の部屋があるじゃん、それが逃げ場所

オレだって聖人君主でもないしお前だって生粋の闇の寵児バスタードじゃん?

普通に考えたら喧嘩にならないはずがないんだよ

ご機嫌斜めなときだってあるし、イライラしているときもある

そんなときってだいたい自分の部屋に閉じこもるじゃん

自分の部屋で自分の悪感情を処理してから話をするわけだ

だから喧嘩にならないってだけで、べつにオレの人間性が優れているわけでもないしお前の人間性が優れているわけでもない

オレたちは環境に助けられているんだよ』

 

 

『ほほう、そういう要因もあるのかもなぁ

 

 

『世の中には様々な環境があってだな、ワンルームに二人で暮らしている人もいるわけだ

自分の部屋がない旦那さんや奥さんもいるわけだ

四六時中顔を付き合わせていなければならない環境にいればそりゃフラストレーションも溜まるだろ

そういう観点から見ればそれがただの排泄欲求でも意味のあるものだと思うんだよな、我慢で蓄積させるよりナンボかマシだろ

もしオレらに個々の部屋がなくて、ずっと二人きりだとしたらお前どうよ?』

 

 

『舌を噛み切って自害する』

 

 

『そこまでイヤ・・・?ねえそこまでイヤ・・・?

でも環境って結構大きな要因だと思うぞ

なんでもかんでも人間性のせいにしたらあかん』

 

 

『でも男性の攻撃性って女性からしたらすげー怖いぞ?

殴り合いになったら勝てるわけないもの

原始的な怒りの感情を向けられたら為す術もない

最終的に女が屈服するしかないってのはどうも納得がいかん』

 

 

『怒らなければいい

 

 

『ふぁ?』

 

 

『要するに内にあるフラストレーションを吐き出したいだけだろ?

そのための手段が怒りになっているだけじゃん

べつにフラストレーションを吐き出す手段は怒りだけじゃない、泣くことで発散もできるはず

いやむしろ泣いた方がうまく発散できるかもしれない』

 

 

『あー、怒りは感情の蓋って言うからなぁ

泣きたいってのが本音なのかもしれない』

 

 

『だろ?喧嘩なんかしないで泣けばいいんだよ

お前の泣き場所はオレの胸、オレの泣き場所はお前の胸

そうやってお互いのフラストレーションを許容できる胸になるべきなんだ僕等は』

 

 

『若干気持ち悪いけどうまくまとまったな』

 

 

『気持ち悪いって言うな、泣くぞ』

 

 

『まぁこれにて一件落着ってことで』

 

 

『押忍!』

 

 

『せーの』

 

 

『かんぱーい』