母上様

先日は突然帰つて驚きの事だつたらうと想ひます。

早速お便り差上げやうと思ひ乍らさて改つて書く事もなく過して来ました。

何の親孝行も出来ず心苦しく思ひます。

二十六年幸せだつたと心から思ひます。

有難う御座いました。

自分も小隊長として可愛い部下三名、十九と二十の若武者を引きてれて突撃して征きます。

花はつぼみと言ひますが本当に清らかなものです。

篠原、田中、山本の三伍長です。

この手紙がつく頃は見事戦果をあげてみせます。

自分よりこの三人の可愛い部下の為祈つてやつて下さい。

くれぐれも御身御大切に長命を祈つて居ります。

お元気でお過し下さる様。

では征きます。

必ずやりますから御心配なく。

皇國の 弥栄祈り 玉と散る

心のうちぞ たのしかりける

潤二郎

陸軍大尉

若杉 潤二郎

第六十一振武隊隊長

昭和二十年四月ニ十八日

沖縄方面にて戦死

明治大学卒

長崎県出身

ニ十五歳