昭和二十四年二十日
心静かな一日であつた。
家の者 とは会はなかつたが、懐かしき人々とは存分語り合ひ、心楽しき時を過し得た。
今日去れば再び相会ふ事はできぬ身なれど、少しも悲しみや感傷に捉はれる事なく、談笑の中に別れることが出来たのは、我ながら不思議な位である 俺にとつても、自分が此処一週間の中に死ぬ身であると云ふ気は少しもせぬ。
興奮や感傷も更に起こらぬ。
只静かに我が最後の一瞬を想像する時、すべてが夢の如き気がする。
只死する瞬間迄かく心静かにをられるかどうかは自分にもわからぬが、案外易い事の様にも思はれる。
海軍大尉
市島 保男
神風特別攻撃隊第五昭和隊
昭和二十四年四月二十九日
沖縄県東南方海上にて戦死
早稲田大学第二高等学院生
東京都出身
二十三歳
心静かな一日であつた。
家の者 とは会はなかつたが、懐かしき人々とは存分語り合ひ、心楽しき時を過し得た。
今日去れば再び相会ふ事はできぬ身なれど、少しも悲しみや感傷に捉はれる事なく、談笑の中に別れることが出来たのは、我ながら不思議な位である 俺にとつても、自分が此処一週間の中に死ぬ身であると云ふ気は少しもせぬ。
興奮や感傷も更に起こらぬ。
只静かに我が最後の一瞬を想像する時、すべてが夢の如き気がする。
只死する瞬間迄かく心静かにをられるかどうかは自分にもわからぬが、案外易い事の様にも思はれる。
海軍大尉
市島 保男
神風特別攻撃隊第五昭和隊
昭和二十四年四月二十九日
沖縄県東南方海上にて戦死
早稲田大学第二高等学院生
東京都出身
二十三歳