出撃の前夜

心は何時もと少しも変わず平静です。

自分の今の心境は唯必沈あるのみです。

今米鬼の攻撃を目の前に見て志氣愈々盛なり。

最後の飛び立つ飛行場は九州の最南西端知覧飛行場です。

此処から六00粁飛んで沖縄に行き、敵艦上に突込みます。

勿論帰路のガソリンは有りません。

若し敵艦が見つからなかつたならば、島でも、敵陣地でも敵の居る処に突込む覺悟であります。

達夫は最後まで元氣で御國の為に喜んで散華して行きます。

では呉々も御体大切に、達夫の分まで永生して下さい。

身はたとへ 愛機と共に 砕くとも

魂永久に 國ぞ護らん

若櫻 春をも待たで 散りしゆく

嵐の中に 枝を離れて

達夫拝

御両親様

陸軍少尉 

若尾 達夫

第四三ニ振武特攻隊

昭和ニ十年五月ニ十八日

沖縄附近にて戦死

神奈川県出身

ニ十ニ歳