ひで子、夫は戦に立つ。

すでに家を出る時、万事話をした如く、俺の留守中はお前に責任があるのだから、物事に注意して、しつかりして家を守つて下さい。

父、母を安心させよ。

正樹を大切に育てよ。

そして、全責任をよく思つて、一家ほがらかに暮らせる用にして下さい。

しかし、余り身体に無理をするな。

近所の人たちに笑はれない様にせよ。

昇より

ひで子殿

おッ母さん。

昇は元気で行つて来ます。

すでに家を出る時、男として覚悟はし、又おッ母さんも覚悟をして下さつた事でせう。

私の事はすこしも心配はいりませんから、毎日身体に充分注意して下さい。

そして決して無理をしてはいけません。

どうか正樹と楽しく暮らして下さい。

そして私の帰るのをたのしみにして居て下さい。

戦争ももう長い事はないでせう。

昇は一生懸命お國のために働いて帝國軍人として頑張つて来ます。

そして立派な男となつて家へ帰ります。

それまで、どうか、たのしみに暮らして下さい。

正樹の事はくれぐれもお願ひ致します。

之からは寒くなりますから、身体にえらい事でせう。

充分に注意して下さい。

昇より

お母さんへ

陸軍一等兵

小林 昇

昭和十九年十二月二日

鹿児島県方面海上にて戦死

愛知県出身

二十四歳