寿子どの

深愛を持ちつづけながら、そのいたはることすくなかりし結婚生活をゆるせ。

特に俺の従軍久しき亙り(わたり)、家事に育児にお前にかけた苦労のみ多く、今此不幸を与へ、想えば断腸の思ひである。

寿子よ許せ。

然し俺の武人としての正しさは、誰かによつて伝へられる。

戦犯の名はつらからうが、勿論俺は日本の罪人ではない。

戦にこそ散れなかつたが、堂々と日本男子の散りぎはを示して逝く。

寿子よ、泣くな。

更に強い母となつて三児の養育をたのむ。

父上母上の教へを守れ。

子供をひがまさず、正しい人間にしてやつてくれ。

俺の愛はどこまでも御前の幸福を守りつづける。

寿子よ 有難う。

お前は俺の最初の愛人であり、最後の恋人でもあつた。

俺は従軍間どんなにか幸福を得られ、又正しく生きられたことか。

そして寿子よ

愈々(いよいよ)明日六日午前九時十五分南溟(南の方ににある大海)に散る。

とこしへの愛に生くる幸福を抱き、お前達母子の行末を守りつづけながら  さやうなら。

陸軍大尉

星島 進

昭和二十一年間四月六日

ラバウルにて殉難死

岡山県出身

三十五歳