中国が靖国参拝を非難する理由付けとして、東京裁判での「A級戦犯」が合祀されている点を挙げているが、中国にはそもそも東京裁判を持ち出す法的資格を持っていない。

第一に、東京裁判の判決に日本が従うと取り決めたのは、サンフランシスコ平和条約であるが、この点について上坂冬子氏は、次のように指摘している。

サンフランシスコ平和条約に署名、批准していない国には「いかなる権利、権原又は利益」も与えないと書かれている。

サンフランシスコ平和条約には日本を含む四十九カ国が署名、批准しているが、その中に中国も韓国も見当たらない。ご丁寧にも条文として、ここに署名、批准していない国によって日本の利益が「減損され、又は害される」ことはないとまで書き入れてある。

つまり条約に署名しなかった国には、クレームをつける資格もないことになる。

次元の低い参拝の是非論ではなく、国家として国際条約に対する無資格を突きつけて近隣諸国の内政干渉に区切りをつけない限り、靖国問題の決着はつかない。

(産経新聞、H17.12.29、「正論 靖国問題は外交の根本変える好機」)

日中の関係の根本は、昭和53(1978)年に締結した日中平和友好条約で規定されているが、これに関しても屋山太郎氏が次のような指摘をしている。

日中両国は一九七二年に共同声明、七八年に平和友好条約を結んだ、同条約第三条は「平等、互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則」をうたっている。

また同条約締結の際、極東裁判や判決については全く触れていない。中国が全く触れる権利のない問題を取り上げ、日本の政財界人、マスコミを操ろうとするのは内政干渉そのものだ。

(産経新聞、H18.02.10、「正論 『靖国』で確認したい4つのポイント」)

人と人との関係で問題が起こったら、法律や契約を基に解決するのが、近代社会の原則。国と国との問題も同様で、ある国が他国に何か要求をして問題となったら、両国が締結している国際条約、および相互条約に照らして、判断しなければならない。

サンフランシスコ平和条約、および、日中平和友好条約のいずれを見ても、中国には「A級戦犯」について、我が国に何かを要求する権利はない。