盧(ノ)前大統領の訃報 | ぐるくんのむだばなし

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大好きな韓ドラを見ていて気付く、韓国の生活習慣などに興味がわきます。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領が、23日慶尚南道(キョンサンナムド)金海(キメ)市の自宅の裏にある烽火山(ボンファサン)の岩場から飛び降り、自ら命を絶った。

 盧前大統領とその家族は、就任中の収賄疑惑などで検察の取り調べを受けている最中で、連日その報道がされていたが・・・やはり、一国の大統領であった人物の自殺は衝撃的なニュースだ。
 
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 韓ドラ好きが高じて、様々な時代の韓半島における歴史なども自分なりに学んできたが、この報道に至って、改めて、韓国の歴代大統領にまつわる汚職事件を考えてしまう。


 初代(~3代)大統領、李承晩(イ・スンマン)ssiは、1960年大統領選の不正に端を発し、退陣要求の学生らを中心とした大規模な蜂起で下野し、海外亡命先のハワイでその生涯を閉じている。

 第4代の尹潽善(ユン・ボソン)ssiが就任。

 しかし、その後、軍事クーデターで朴正煕(パク・チョンヒ)陸軍少将が、政権を掌握し、以後長きに亘る軍事独裁体制で長期の権力(第5~9代)を振る事となった。

 1979年10月26日、側近の部下に射殺され、18年5ヶ月に及ぶ独裁政権が幕を閉じた。

 この年の12月、陸軍士官学校11期生出身の仲良しコンビ、全斗煥(チョン・ドゥファン/1981年就任)と盧泰愚(ノ・テウ/1988年就任)に代表される「新軍部」によるクーデターが起こる。


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 それぞれ大統領に就任したが、両氏とも退任後に包括的収賄罪で逮捕されている。

 金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)両元大統領も、任期末に息子が逮捕されている。

 
 1995年12月に逮捕された全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領の場合、妻の李順子(イ・スンジャ)、その親戚張玲子(チャン・ヨンジャ)、実弟の全敬煥(チョン・ギョンファン)などによる不正蓄財や巨額手形不正事件などが明らかになっている。

 つまり、韓国では権力癒着型の不正が横行してきた歴史があるのだ。

 日韓共催のワールドカップ開催に沸いた2002年の師走、次期大統領選に名を挙げていたのは、優勢を誇る保守野党ハンナラ党李会昌(イ・フェチャン)ssiと与党新千年民主党、ネット投票で選ばれた盧武鉉(ノ・ムヒョン)ssiだった。

 盧武鉉は、1946年金海(キメ)に生まれ、高卒で就職する。

 苦学の末、29歳で司法試験に合格、判事を務めた後、1978年に弁護士となる。

 人権弁護士として活躍し、1988年に統一民主党から出馬し当選し、政治家として歩み始める。

 1990年、盧泰愚(ノ・テウ)政権の政策を批判し、統一民主党を遺脱するも、党総裁だった金泳三(キム・ヨンサム)ssiから睨まれる立場となり、以降出馬する総選挙、釜山市長選挙などなどに悉く敗北。

 一方、勝てない選挙にあえて挑戦する盧泰愚ssiに共感し、支持する民衆が「ノサモ(盧泰愚を愛する会)」と言う、ネット上にサポーター・サイトを2000年に発足させた。

 そしてこの「ノサモ」は、2002年3月から4月に行われた党内予備選挙で盧泰愚ssiを大統領候補にまで押し上げる、新たなパワーを生み出した。

 高卒と言う学歴で、ネットの力によって当選したニュータイプの大統領だったのだ。

 自らも、公式HP「人が生きる世界」(www.knowhow.or.kr)を通じ、政策や情報などを公開していた。

 今回の訃報が伝えられた23日、「ノサモ」(www.nosamo.org)のサイトには、アクセスが殺到し、サーバー・ダウンしている。
 
 また、公式HPの方にもアクセスが殺到した為、アクセスしにくいとの状況説明と、追悼掲示板へのリンクメニューのみを表示して対応しているそうだ。


 新しい時代を予感させ、クリーンなイメージだった盧泰愚前大統領であったが、昨年11月頃から、身辺の不正が問題になり、メディアで盛んに報じられるようになっていた。

 実兄、盧建平(ノ・ゴンピョン)ssiとそ娘一家(婿のヨン・チョルホssi)をはじめ、妻の権良淑(クォン・ヤンスク)夫人、長男の盧建昊(ノ・ゴンホ)ssi、長女のノ・ジョンヨンssiら一族の他、大統領府(青瓦台)での側近たちにまで及ぶ、収賄容疑で検察の捜査を受けていた。

 
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 贈賄側は、利権を狙い政界ロビー工作を行ったとして、すでに逮捕されている泰光実業朴淵次(パク・ヨンチャ)会長や農協中央会鄭大根(チョン・デグン)会長など。

 盧前大統領自身も、4月30日、朴淵次会長から金品を受け取った疑いで、検察の取り調べを受けていた。

 大統領と言う最大権力者がバックにいる事を誇示する身内が悪いのか、利権を得ようとコネクション狙いで群がる方が悪いのか・・・すっかり染み付いてしまっている慣習のような体質を改善していくのは、大変な事なのだろう。


 盧前大統領の葬儀は「国民葬」として執り行われる事になったそうだ。

 葬儀は7日間にわたり行い、故人の遺志に基づき、火葬するそうだ。

 棺は、故郷に安置され、埋葬される事となったと言う。

 ちなみに、大統領経験者の「国民葬」は、2006年に死去した崔圭夏(チェ・ギュハ)元大統領に続き、2人だと言う。

 在任中に死去した朴正煕元大統領の葬儀は「国葬」で執り行われた。

 李承晩、尹潽善両元大統領の葬儀は、「家族葬」で行われたそうだ。


 悲報に嘆き悲しみ検察の追及の是非にその矛先を向けたり、逆に、必要以上に死者に鞭打つような所業に走る事無く、国の最高権力者である韓国大統領絡みの贈収賄などの不正を生み出す体質が、財閥主導の自由主義路線を増長させ、貧富の格差を深刻化させている事実に立ち向かって行って欲しい。

 就任1年後に大統領弾劾訴追案が可決され、約2ヵ月もの間、休職する事態となった盧前大統領を救った若い世代を中心とした支持層に対しても、毅然と検察の捜査を受け、真実を明らかにすべきだったとは思う。

 考えた末に、自分の影に身を寄せる多くの人間を守る為の唯一の道だったのか?なんとも言えぬ気分だが、今は静かに冥福を祈ろう・・・