大学を卒業して、出版社に入社したのが19年前。かな?
京都に本社を置く古い会社で、良く言えば家庭的な雰囲気があり、悪く言うと"イマドキ"に置いてきぼりをくらったようなアナログな会社。
そこで私はもう一人の女性とその事業部初の女性営業部員として迎え入れられました。
事務の女性はたくさんいたけど、営業として全国を駆け回る女性は初めてだったので、全国支社のおじさまおばさまたちからは娘のように可愛がってもらいました。
先輩や上司も、20代前半の女子には厳しくもやっぱり優しい。
でも、仕事は難しくて、どうすればいいか分からないことが多くて、重たい書籍をたくさん持って慣れないヒールで歩き回るのは、特に雨の日は泣きそうになることもしばしば。
口が立つわりに不器用な私は、仕事の仕方が分からず焦りを抱えたまま過ごす日々。
同期で同じく初の女性営業部員として入社した彼女は、小柄で大人しそうな見た目とは裏腹?に、頭が良く私よりずっと器用で、テキパキと動いては仕事をこなしていました。
すごいなぁと、彼女に小さな劣等感を感じつつも、負けないように奮闘。空回り…
そのうち、スキューバにハマったことも重なって、仕事をちゃんとこなせないまま退職してオーストラリアに飛んだ私です。

彼女はその後も頼もしく仕事をこなし、東京に転勤になってから結婚。旦那さんの転勤を機に退職したようでした。
年賀状だけの繋がり。でもいつかまた同期会とかで会えたらいいねとか書いてあったり。
二人の子供を持つお母さんになった彼女。付き合いは短かったけど、初めて出た社会で同期として輝いてた彼女とは、たとえ年賀状だけだとしても、これからも繋がっていくんだと思ってました。

2日前、ポストにハガキが。
覚えのあるようなないような、差出人の名前。
ん?私宛??
と、もう一度宛先を確認したけど、確かに私宛。
縦書きの文面の書き出しに彼女の名前を見て、息が止まりそうになりました。

彼女が先月に空に帰ったと、ハガキは知らせてくれました。
詳しくは書いてなかったけど、去年の10月に病気が見つかり、治療を続けていたけど、先月初めに息を引き取ったそうです。
病気が見つかってから半年も経ってない。
何の病気かわからないけど。

小柄だけどチャキチャキして、パワフルだった彼女。
色白でまつ毛が長く、お人形さんのように可愛らしかった彼女。
過ごした時間は短かったけど、私の記憶には笑顔でバリバリ仕事をこなす頼もしい彼女がたくさん残ってました。

退職して会わなくなって約16年。
きっといい奥さんで、いいお母さんだったんだろうなぁ。
今年は年賀状が届いてなかったから、どうしたのかなって思ってた。
病気と闘っていたんだなぁ。

平均寿命が延びたからって、寿命を全うできる保証なんてないし。
いつ何があるか、わかんないし。
ちゃんと生きないといけないなと思います。
子供たちのこれからを共に過ごせないことが、きっと残念だったに違いない。
空から見守れるだろうか。
母となり自分より大切な存在ができたから、できる限り成長をそばで見ていたいと願う今、当たり前の毎日を大切にしたいと思います。

ずいぶん前に空に帰った後輩と同じように、彼女のことも、空を見上げる時に時々思い出そう。