気持ちの荒波と不意打ち癌宣告。 | DIVAKIへの日々〜ドイツ在住劇場専属オペラ歌手 辻井亜季穂の日記

DIVAKIへの日々〜ドイツ在住劇場専属オペラ歌手 辻井亜季穂の日記

DIVAを夢見て大修行!!ソプラノ辻井亜季穂の、ときどき日記!
ドイツ在住オペラ歌手の日常生活のあれこれを綴っています。
最近は、 去年の夏に経験した病気についてまとめ中。
多くの方の、ご自身の健康を考え直す機会になりますように。

そもそも、将来赤ちゃんを産みたいのなら…というのがきっかけで受けた診察が思わぬ展開になり。
 
なんで、もっと早く検査に行かんかったんやろう。
病状が進行していて、子宮全摘出になったらどうしよう。こども好きで、お母さんになることが一番最初の夢やったのに。
赤ちゃん産めなくなったらどうしよう。
彼にも申し訳ない。彼はひとりっこやから、私とおったら、彼のお母さんも孫の顔を見られへん。
彼をお父さんにしてあげられないのだとしたら、それが分かった時点でさよならすべきだな。
他の人と幸せになることだってできるんやから。
 
前回の診察直後、そんな思いで頭がいっぱいになりました。
自分の責任やねんから、誰にも迷惑かけたらあかんと、気丈にふるまおうとしても、ふとした時に不安が押し寄せてきて、コントロールできなくなる状態。
病院どうやった?と心配そうに聞く彼をみて、急に堪えていたものが崩壊し、気が狂ったかのように、全身がちぎれるほど泣きました。
 
きっと大丈夫。きっとかわいい赤ちゃん持てるようになるよ。大丈夫。
もしも、もしもあかんかったとしても、こどもを持つことだけが幸せになる方法じゃない。
もちろん子どもは欲しいけれど、いない人生だって、2人一緒に幸せに生きていかれる。
 
どうしようもない状態の私のために、たくましくそこに居て、優しい言葉をかけてくれた彼に心から感謝。
そうして、もう心配かけまい!もう取り乱さない! (ほんまかいな)と心に決めての夏休み1日目突入!
(やっと本編はじまりますー笑)
 
7月24日金曜日 駅へ向かう途中
待ち合わせの時間ぎりっぎりで、スーツケースを引っ張りながら一生懸命歩いているところに着信。
Uni Klinik Frauenarzt(婦人科) の○○です。(あの男のお医者さんえー) 水曜日にコルポ生検を受けましたよね
悪性の腫瘍が見つかったので、月曜日午後3時にもう一度来院してください。OP内容の変更について話し合わなくてはなりません。では。
淡々と要件を述べて、がちゃーんと切られました。(え、黒電話?😂) 気持ちを入れ替えてプチ旅行に挑むつもりが、また私の精神はぐらぐら。
駅までの道中残り5分、私の頭は
水曜まで旅行行くって決めたのに。またロべちゃん(彼)怒るかなー。夏休みやのに、私のせいで予定組めなくて可哀想やな。悪性の腫瘍って、癌やんな?あぁいうのって、家族呼び出されて報告されるもんとちゃうの?こんな感じなん?ドラマだけ?日本だけ?私、癌って言われた?
 と、混乱。
 
駅に着いて彼と合流するや否や
病院から今電話あって、月曜日にまた来いって!だから、5泊じゃなくて3泊になるわ。ごめんな!私一人で帰ってこれるから大丈夫やで!私癌なんやってさ。
と、さらっと言えたのも、 まだ聞きたてホヤホヤの状態で、 飲み込めてなかったからでしょう。彼も え?3泊?急やな。ん?今、癌って言った?みたいな感じ。笑。
 
とりあえず電車に乗り込んで席に着くも、まだ 情報を咀嚼中の二人は沈黙。
しばらくして、私は自分の目から涙が出てきたのに気づいて、事態の把握を実感。  
でも、旅は楽しく過ごすと決めていたので、ちょっとだけ泣いたら後はニコニコウインク
 
道中、カフェ、コーヒー大好きな我々の夏休み最初のコーヒー。 

 LIFE IS TOO SHORT TO DRINK BAD COFFEE  (言うてますけど、そない美味しなかったでっせー。) 
ガン宣告された日に命にまつわるメッセージ読んだら、普段よりも深く染みる。
 
Freiburg(フライブルク)到着してすぐに向かったのは、 町で一番美味しい、純メキシカンなタコス屋さんYEPA YEPA。ダイエット中で18時以降食べないロべちゃん(メキシコ人) を横目に、たらふく食べましたゲラゲラ 申し訳ない。
彼の友人のメキシコ人ファミリーのお家にお邪魔して、 幸せでお腹いっぱいな、がっつりメキシカンな3泊を過ごし....
 
7月27日月曜日 午後3時 @Uniklinik (大学病院) 
Freiburgから戻ったその足で病院へ。
待てど暮らせど呼ばれる気配はなく.... 目の前では本日4時間待たされているという80代の女性がガチ切れていました。 (そら切れるわ) 
 
午後4時半
ようやく呼ばれて中へ。 前回とは違う若い女医さんが居て、更に少し遅れて熟年の女医さんも登場。
 
熟女医: 今日は人手が足りてなくて随分お待たせしました。 妊娠希望はありますか? 
 
AKI: はい。そもそもその為に診察受けたんです。
 
熟女医: (私の目をじっと見て) んー... 厳しいと思います。 
 
AKI: ガーンガーンガーンガーンガーンガーンガーン
 
熟女医: 内診していいですか?
 
AKI: はい。 その前に、お手洗い行っていいですか?長いこと待ってたからそろそろ限界で....
 
トイレを済ませて診察台へ。コルポスコープと触診、足の付け根や下腹も触診。
 
熟女医: (無表情で淡々と) 進行具合は詳しい検査をしないとわかりかねますが、私が見る限り、かなり進行していると思います。膀胱や直腸まで浸透していると思う。全摘出になるので、妊娠は不可能でしょう。覚悟決めて下さい。OP予定日だった7月31日には、予定とは違う"検査オペ"を行います。全身麻酔で、子宮頸部の色んな箇所から細胞を採取すると同時に、膀胱や直腸にカメラを入れて浸透の有無を確認します。それまでにCT, MRT (MRIのこと) も取ります、後でアポ確認しておいてください。質問ありますか?
 
AKI: ........ (ショックなのと情報量が多すぎて涙目。なんの負けず嫌いか、泣いてたまるかと、我慢大会。) 
 
熟女医: では、全ての検査結果が出たらまたOPについて話し合いましょう。 
 
熟年の女医さん退場。若い女医さんにバトンタッチ。
 
若女医: 私はそんな進んでるとは思わないけどなぁ。心配することないですよ、多分大丈夫。(ほんまかよ!) 30日早朝にコロナ検査に来てもらって、問題なければCT撮ります。その日は病院泊で、31日は予定通り午前8時30分のオペです。前夜0時以降は何も食べないでください。その後、体調次第でその日のうちに退院です。 MRTは、今週は予定取れなかったので、7日になります。
今から採血してその後最後に、 検尿提出して帰ってくださいね!
 
AKI: 滝汗 ご存知の通りたった今お手洗い行ったばっかで...
 
若女医: そんな大量には必要ないから大丈夫!ちょろっとだけで!がんばって!
 
15分は粘ったけど、そのちょろっとさえも出ることなく、空のカップだけそーっとおいて帰りました。私はその日最後の患者で、病院を後にしたのは午後5時20分のことでした。
 
 
熟年の女医さんに言われた言葉が脳天からぐさーっと刺さって、何をする気も起きず。
もう取り乱さない!と3日前に決めたのに、堪えきれず。
 
膀胱や直腸にまで浸透してたら、妊娠どころか、普通の生活さえ出来なくなるんかな。
打つ手がないくらい進行、転移してたら私どうなるん?
こんな中途半端なキャリアで、 やりたいことまだ何にも出来てへんのに死にたくない。
親孝行も先生孝行も出来てへんのに。
闘病生活になるなら、 彼の人生の邪魔したくない。
 
ボロボロと出てくるまとまりのない言葉と涙。
本当に辛かった。この時が一番辛かった。うそ、もっと辛いときもあった。
 
生きていてくれればそれでいい。まだまだ一緒にいろんなところ旅したい。
いろんなカフェ行こう。  いろんなことしよう。
生きていてくれればそれでいいから。
 
自分も辛いだろうに、こんな優しい言葉を言えるロべちゃんは、 実は強い人だったんだなぁと思いました。
こんな時に、こんな言葉をかけてくれる人が傍にいて、私は恵まれてる。感謝してもしきれない。 
今まで周りの人に対する感謝の気持ちが足りてなかったから、神様は私に天罰を与えたんかな、と本気で思う。
 
切り花はお花を殺してるから嫌い主義の彼が、スーパーに行ったときに見つけて買って来てくれた薔薇。
私はお花大好きなんですよねニヤリ そんな訳で初めてのお花をもらいました。 
病気にでもなってなかったらこんなスペシャルなお花は貰えてなかったかもなぁ。
 
 
その日から、時間さえあれば病気、 病状、治療法等について、CT/MRIについて、めっちゃググりました。笑。
色んな方の闘病ブログに、本当多くの情報を学ばせていただき、 たくさん勇気ももらいました。
私が下手なりにこうして書き留めるこのブログも、 いつか誰かの何かのお役に立ちますように。
 
つづく...
 
 
いいねラブラブコメントラブレターメッセージ お待ちしてますチュー