ちょくちょく旅の記録を書かせていただいていますが、掲載している写真をどんな機材で撮っているのかについては、また改めてまとめてみようと思っています。
今回は、その中でも最近になって改めて面白さが分かってきたカメラ、富士フイルムの「X half」について書いてみたいと思います。
発売から約1年。
発表当時から大きな話題となったこのカメラ。正式名称は「FUJIFILM X half(X-HF1)」です。
発売直後から賛否両論が巻き起こりました。
「なぜ今さらこんなカメラを?」
「RAWが撮れないのは不便では?」
「ライトリークや期限切れフィルムを再現する意味はあるのか?」
そんな声も少なくありませんでした。
確かに、スペックだけを見れば万能なカメラではありません。
1型センサーに35mm判換算約32mm相当の単焦点レンズを搭載。RAW記録には対応せず、JPEGのみ。撮影後にじっくり現像して仕上げるというより、その場で写真を完成させるカメラです。
しかし、しばらく使ってみて思うのは、このカメラは「写真を撮るための道具」というより、「写真を楽しむための道具」なのだということです。
ハーフサイズという発想の面白さ
「half」という名前から、センサーの半分だけを使っているカメラだと思われることがありますが、そうではありません。
このカメラの本質は、かつてのハーフサイズフィルムカメラの体験を、現代のデジタル技術で再構築したことにあります。
1型センサーを縦位置で配置し、基本フォーマットも縦構図。
スマートフォン時代を意識した設計とも言えますが、実際に使ってみると、それ以上に独特な感覚があります。
どこか懐かしいのに新しい。
フィルムカメラを知っている世代には懐かしく、知らない世代には新鮮に映る。その絶妙なバランスが、このカメラの面白さの一つです。
搭載されるレンズは10.8mm。フルサイズ換算で約32mm相当です。
メーカーによれば「写ルンです」で慣れ親しんだ画角とのこと。
広すぎず狭すぎず、人の視線に近い自然な画角なので、旅先でも日常でも気軽にシャッターを切ることができます。
デジタルなのに“フィルムで撮っている感覚”
このカメラを語るうえで外せないのが、圧倒的な遊び心です。
2枚の写真を1枚の作品として仕上げる「2in1」。
フィルム由来の質感を再現する多彩なフィルター。
そして、撮影そのものを楽しむ「フィルムカメラモード」。
どの機能も、便利さや効率化のためではありません。
写真を撮る時間そのものを楽しむために用意されています。
1枚撮影して、レバーを引き、もう1枚撮る。
たったそれだけで、カメラ内で1枚の作品として仕上がります。
このレバー操作が実に心地よく、どこかフィルムカメラの巻き上げレバーを操作しているような感覚があります。
フィルムカメラモードでは、実際にこの巻き上げ作業が必要になります。
撮影しようと思って、「あ、巻いてない!」なんて感覚は、本当に久々です。
もちろんアプリを使えば後から組み合わせることもできます。
それでも撮影中に、
「次は何と組み合わせようか」
「同じ色で揃えてみようか」
「時間の流れを表現してみようか」
と考えながら撮る時間が楽しいのです。
風景と人物。
出発前と到着後。
朝と夕方。
同じ色同士。
似た形のもの。
旅先では特にそう感じます。
観光地の決定的な一枚を狙うというより、その場所の空気や時間の流れを残したくなる。
そんな撮影スタイルに自然と変わっていきます。
“狙えないエモさ”を作れるカメラ
X halfには19種類ものフィルターが搭載されています。
その中でも特に印象的なのが、「ハレーション」「ライトリーク」「期限切れフィルム」といった新しいフィルターです。
本来であれば偶然発生する現象や、フィルム時代なら失敗写真とされることもあった表現を、あえて楽しむための機能として取り込んでいます。
フィルムメーカーである富士フイルム自身が、こうした表現を積極的に採用しているのですから、なかなか大胆です。
実際、SNSなどでも「こんな機能は必要なのか」という声がある一方、「思わず撮りたくなる」「撮影が楽しくなった」という評価も見かけます。
個人的には、このカメラの価値はそこにあるのだと思います。
写真の完成度を追求するなら、もっと高性能なカメラはいくらでもあります。
でも、旅の途中でふと立ち止まり、「これを撮ってみようかな」と思わせてくれるカメラは意外と多くありません。
実際に使ってみると、不思議な感覚があります。
「エモい写真を撮ろう」と意識すると、意外と撮れないものです。
ところがX halfでは、普通に撮っただけなのに、どこか懐かしく、少し物語を感じる写真になる。
もちろんカメラが勝手に作品を作ってくれるわけではありません。
それでも、撮る人の感性を少し後押ししてくれる。
そんな絶妙な距離感が、このカメラにはあります。
カメラとしては、さすがXシリーズ
一方で、遊び心ばかりが注目されがちなX halfですが、カメラとしての基本性能もしっかりしています。
1型センサーにそこそこ明るい単焦点レンズを搭載し、ライブビュー可能な背面ディスプレイに加えて光学ファインダーも備えています。
接写はレンズ先端から約10cmまで可能です。
実際に使ってみると、近接撮影でも周辺までしっかり描写してくれますし、ボケ味もなかなか良好です。
もちろん欠点もあります。
RAW記録がないため、フィルムシミュレーションやフィルター効果は後から変更できません。
いわば一発勝負です。
でも、その不便さも含めて、どこかフィルムカメラに近い感覚があります。
撮った瞬間に写真を決める。
あとで何とかしようではなく、その時の気分で選ぶ。
そんな撮影体験そのものを楽しむカメラなのです。
最近は高性能なカメラやスマートフォンが当たり前になりました。
だからこそ、写真の上手さではなく、「撮る楽しさ」に振り切ったX halfの存在は意外と貴重なのかもしれません。
旅の記録を残すというより、旅そのものをもっと面白くしてくれるカメラ。
それが私にとってのX halfです。
note
この記事で書いたような、旅やまちの中で感じたこと、観光やホスピタリティについて考えたことは、noteでも少しずつ整理して書いています。
無理に答えを出すのではなく、一緒に考えるための視点を残す場所です。
もしよければ、のぞいてみてください。
▶︎ note「まちと旅を考えるノート」









