悲哀と復讐の裁き
そんな地獄と化した町で唯一生き残った少年がいた。そう。アーザだ。不思議なことに、アーザは深手を負いながらも、核爆弾から生き残ったのである。
横たわったままアーザは辺りを見た。
「痛…、父さん…みんな…町が…どうして…」
見渡すと瓦礫の山ばかりとなっていた。
核兵器は家族、友達、大切な人、思い出を消し去ったのだ。あまりにも酷すぎる…。
今まで少年の生きていた「日常」は一瞬にして崩れ去ったのだ。
「嘘だ…嘘だ!嘘だ!!こんなのあり得ない…!これは…夢だ…夢なんだ!!夢に決まってる! こんな悪夢早く覚めてくれ! 」
アーザはこの悪夢から目を覚まそうと踞り必死に何度も頭を地面に叩いた。
しかし頭には痛みが走り血が滲むだけ。
目には涙が溢れ地へと零れ落ちるだけ。
そう。これは現実。
瓦礫の山と遠方で燃える炎、これらは全て本物である。
なのに何故アーザだけ生き残ってしまったのだろう?
「何でだよ…何で僕だけ生きてるんだよ!!おかしいだろ!皆死んでるのに!!」
放心状態が続きやがて時は過ぎ夜になる。
町から立ち込める黒煙は空を覆い黒雲からは雨が降り始めた。
雨で炎は燃え尽き少年は一人町を歩いた。
この建物…。見覚えがある。もっと高かったはずなのに。今は見下ろす程度の大きさしかない。
近所の公園…。
ここには沢山の思い出がある。
遊具は無くなり代わりにあるのは瓦礫の山ばかり。
そして僕の家。
ここには数え切れないほどの思い出がある。
でも今は何も残っていない…。
父さんも…弟も死んでしまった…。
なのに何故僕だけ生き残ったのだろう。
もしかしたら今身体の中にあるこの兵器、
これが核に対抗出来る体にしたのかも知れない。
父さんは戦って欲しいと言った。でも僕は怖かった。
臆病だったから戦う事ができないまま時が過ぎていった。
臆病だったから…。
その結果がこれだ。父さんや友達、皆死んでいった。町は核により滅んだ。
「僕のせいだ…。全部僕のせいだ…。」
でも父さんは言っていた。
お前のせいじゃないと…。
核兵器を放った奴らのせいだと…。
ゴルボルーニュの、グレンガーと言う大統領のせいだと言っていた。
僕は許さない…。
絶対に許さない。
町を滅ぼした人間が、皆を殺した奴が憎い。
怒ればいい。
憎め、怒れ。もっと強く。
強い憎悪、怒りは次第にアーザの臆病さ謙虚さを掻き消して行くのであった。
「奴らに仕返しをしてやるんだ!!
奴らを、殺した奴らに僕が復讐をしてやる!!
覚悟しろ!!」
アーザが復讐心と言う強い感情を抱いたその時、突然彼の右腕に激痛が走り出した。